院長コラム

HPVワクチン接種世代で子宮頚がんリスクが低下しています

子宮頚がんの一次予防としてHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンが有効であることは世界的にも明白ですが、日本でのデータでも、HPVワクチン接種世代で子宮頚がんリスクが低下していることが明らかになりました。
今回は「Medical Tribune vol.51 No.27」の記事を中心に、HPVワクチンについて説明します。

 

 

子宮頚がんの原因

子宮頚がんのほとんどは発がん性が高い、ハイリスク型HPVが子宮頚部に持続感染することで発症します。HPVに感染しても、約90%の方は免疫力で自然に治りますが、約10%の方は持続感染し、病変が進行します。

子宮頚部病変は軽度異形成から中等度異形成、さらに高度異形成と進行し、その時点で治療しないと上皮内がん、浸潤がんへと進行します。
ちなみに、軽度異形成ががんへ進行する頻度は約1%、中等度異形成は約10%、高度異形成では約20%ともいわれています。
また、免疫抑制剤の使用や喫煙などで高度異形成やがんへの進行が促進されるといわれています。

 

 

子宮頚がん予防にはHPVワクチン

約15種類あるハイリスク型HPVのうち、特に発がん性が高いタイプは16型と18型で、子宮頚がんの原因の約60%を占めるといわれています。現在日本では、「サーバリックス」と「ガーダシル」の二種類のHPVワクチンが認可されていますが、どちらも16型と18型の感染を予防します。ちなみに、ガーダシルは尖圭コンジローマという良性の性感染症にも予防効果があります。

HPVワクチンの接種対象は、最も推奨される年齢は10~14歳、次に推奨されるのが15~26歳の女性です。27~45歳の方でもご希望があれば接種が可能です。

また、性交未経験者に接種することが最も望ましいですが、性交経験者にも接種して頂きたいですし、子宮頚部細胞診陽性の方でもご希望があれば接種できます。ただし、子宮頚部細胞異常の治療薬ではない旨、ご了承下さい。

 

 

ワクチン導入前世代とワクチン接種世代の比較

わが国では2010年度から公費助成が始まり、2013年4月に定期接種化されました。しかし、接種後の副反応に対する懸念から厚生労働省は2013年6月には積極的な勧奨を差し控えると通達し、現在も継続しています。このように世代間によってワクチン接種率が異なるため、世代間の子宮頚がんや異形成の罹患率の差を調査・研究することは非常に有益です。

この度、1990~93年度生まれの“ワクチン導入前世代”と1994~95年度生まれの“ワクチン接種世代”との世代間での子宮がんリスクの違いについて、研究発表がありました。

子宮頚部細胞異常のうち、ASC-US(軽度病変疑い)以上の細胞診異常率は、HPVワクチン0%の“前世代”が4.0%であったのに対し、HPVワクチン接種率70%の“接種世代”は3.0%と減少しています。さらに高度の異常所見であるLSIL(軽度病変)以上の細胞診異常率は、“前世代”が2.11%であるのに対し、“接種世代”は0.58%に減少しています。

つまり、HPVワクチンの導入によって軽度病変以上の細胞異常は73%減少したことが明らかになり、HPVワクチン接種による細胞異常の予防効果が明らかになったといえます。

 

 

世田谷区では小学6年生相当年齢から高校1年生相当年齢の女子は“無料”でHPVワクチンを接種することができます。
以前HPVワクチン接種後に認められた副反応は、必ずしもHPVワクチン特有なものではないと、現在では科学的・論理的に考えられています。
しかし、厚生労働省からの積極的勧奨は未だ再開されず、現在の与党および安倍政権が事実上“反HPVワクチン”であることを考えると、今後国家主導で子宮頚がん予防が進むことは到底考えられません。誤った“お上”に対抗するには草の根運動しかありません。
次世代のため、今のお母様世代の女性にHPVワクチンの有効性・重要性をご理解頂き、是非子供たちに接種をお勧め頂ければ、と願っています。