院長コラム

思春期女性の月経痛の治療法

初経後1~2年経過した頃から、月経時の下腹部痛や腰痛を認めることがあります。
しかし、「月経痛は自然なことで、薬を飲むほどでない」と考えていらっしゃる女性も少なくありません。
今回は、特に思春期女性の月経痛に対する治療法について説明します。

 

思春期の月経痛は子宮筋の過収縮が原因

子宮内膜が剥がれ、血液と一緒に子宮頚管を通って流れ落ちるのが月経です。
月経血を外に排出するためには、子宮が収縮する必要があります。特に、頸管が未熟で細い思春期女性の場合、子宮収縮が強くなりがちです。
実は、子宮筋を収縮させる「プロスタグランディン(PG)」は“痛み物質”と呼ばれ、子宮内膜で合成されることが知られています。

 

月経痛が強ければ、まず「消炎鎮痛剤」の服用を

月経痛が日常生活に支障きたすのであれば、市販薬で構いませんので、我慢せず消炎鎮痛剤を服用しましょう。
ロキソニン錠などの消炎鎮痛剤はPGの合成を阻害して鎮痛効果を発揮します。
それでも月経痛が軽快しなければ婦人科を受診しましょう。

 

漢方薬が有用なケースも

漢方薬の中には芍薬甘草湯、当帰芍薬散など、子宮筋の緊張を緩和することで月経痛を抑える薬剤があります。比較的副作用が少なく、他の薬剤を併用することも可能です。
ただし、芍薬甘草湯は、即効性がある反面、長期にわたり連続服薬すると、電解質異常などの副作用を認めることがあるため、月経開始前後7~10日間のみ服薬されることをお勧めします。

 

女性ホルモン製剤には子宮内膜症の予防効果も

月経痛治療として、PGを合成している子宮内膜を薄くする方法があります。
低用量エストロゲン・プロゲスチン製剤(LEP:ヤーズフレックス錠など)、黄体ホルモン製剤(ディナゲスト錠など)は、子宮内膜の増殖を抑制することでPGを少なくさせるだけでなく、月経自体を起こさないようにすることも可能です。
また、長期に服用すると、子宮内膜症のリスクが低下することも期待できます。
当院では、消炎鎮痛剤や漢方薬の効果が低い場合、女性ホルモン製剤を積極的に使用しています。

 

思春期に月経痛が強い方は、将来子宮内膜症になるリスクが高いといわれています。
まずは市販の痛み止めで大丈夫ですので服用しましょう。
それでも改善しなければ、お気軽に(内科や小児科を受診するように)婦人科を受診してみて下さい。