院長コラム
冷えに用いる漢方薬
11月も終わり、本格的な寒さがやってくる季節となりました。
今回は、冷えに対する漢方薬について、「女性診療で使えるヌーベル漢方処方ノート」(メディカ出版)などを参考に、情報共有したいと思います。
抹消冷えタイプ
このタイプは抹消の循環不全が原因と考えられ、手足の冷えが中心となります。以下の漢方薬が有効といわれています。
〇当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)
温める作用が強く、下肢が冷えると下腹部痛、腰痛、頭痛を認める方に有効のようです。
〇四逆散(シギャクサン)
温めるだけでなく、精神安定作用のある“柴胡”という生薬が入っており、ストレスが強い方に向いています。
〇当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)
更年期障害や月経不順など、月経関連のトラブルに汎用される漢方薬で、浮腫や疲労感のある方にも用いられます。
腹部冷えタイプ
このタイプは全身が冷え、体の芯から温める必要があります。胃腸の弱い方や下痢をしやすい方はこのタイプで、以下の漢方薬が有効のようです。
〇人参湯(ニンジントウ)
腹部を温めて、胃腸機能を整える作用があり、当院では妊娠悪阻の妊婦さんに処方することがあります。
〇真武湯(シンブトウ)
下痢をしやすい方に使用され、人参湯と組み合わせると作用が強くなるそうです。
冷えのぼせタイプ
更年期障害にみられるタイプで、下半身は冷えるが、上半身はほてり、暑くなります。血行を良くする以下の漢方薬が用いられます。
〇加味逍遙散(カミショウヨウサン)
精神不安、いらいら、疲労感などの精神症状を認める方に有用です。
〇桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)
体格はしっかりしているタイプで、下腹部の圧痛を伴う方にも用います。
〇桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)
体格・体力ともに充実した方で、便秘しがちな方に有効です。
冷えのタイプによって使用する漢方薬を検討しますが、個人個人で効果のあらわれ方も異なります。
服薬による症状の変化を観察しながら、最善の処方を探って参ります。
また、冷え対策として、薬物療法だけでなく、運動習慣、食生活、入浴習慣も大切ですので、生活習慣の改善も心がけましょう。