院長コラム

体重減少を伴う続発性無月経

女性の性機能の成長は体重・体脂肪と関係があり、月経の維持には一定以上の体脂肪率が必要であるといわれています。
しかし、「やせ願望」による無理なダイエットのため、無月経をきたす女性、特に思春期女性は少なくありません。
今回、「女性医学ガイドブック 思春期・性成熟期編 2016年度版」「女性心身医学 2021年11月号」などを参考に、体重減少を伴う続発性無月経について説明します。

 

自分の体重を「過大評価」する若年女性

体格の評価はBMI(体重[kg]÷身長[m] ÷身長[m])で行い、18.5未満を「やせ」、18.5以上、25.0未満を「普通」、25.0以上を「肥満」としています。
15~39歳日本人女性を対象にした調査によると、BMI:18.5~21.9の「普通体重の下位」の女性のうち、約45%もの方が“少し太っている”と認識しており、BMI:17~18.4の「やせ」の女性のうち、“ちょうどいい”と認識している方が30%以上、12%以上の方に至っては“少し太っている~太っている”と認識していると報告されています。
また、月経不順がみられる割合は、「普通」が最も低く、BMI:17~18.4では20%以上、BMI:15未満に至っては半数近くにみられるとの報告もあります。
体重が「普通」を下回り、月経不順になっているにも関わらず、“まだまだ自分は太っている”と誤って認識していることは非常に危険です。
尚、学校健診による調査では、中学校3年生の5%以上、高校3年生の13%以上が「不健康なやせ」と報告されています。

 

体重減少性無月経と神経性やせ症

体重減少が5㎏以上または10%以上になると無月経になるといわれており、体重減少が激しいほど卵巣機能は低下し、卵巣機能の回復が困難になる場合があります。
体重減少を伴う無月経には、主に体重減少性無月経と神経性やせ症(神経性無食欲症)があります。
体重減少性無月経は、標準体重の-15%以上のやせですが、食行動の極端な異常はみられず、努力して食事制限をしていることが多く、体重減少の病識があります。そのため、ホルモン治療を行う前に、体重を増やすことで月経周期を回復させることが治療目標になります。
一方、神経性やせ症は標準体重の-20%以上のやせで、食行動異常(不食・多食・自己誘発性嘔吐など)がみられ、病識に乏しく、体型や体重への歪んだ認識を持っています。そのため治療にあたっては、内科医、精神科医など、多くの専門家による連携が必要になります

 

思春期女性の中にはアイドルやモデルに憧れて、極端なダイエットにはまる方も少なくないでしょう。
また、マラソンなどの長距離選手や新体操などの審美系アスリートの中にも、相対的なカロリー不足による“やせ”が、無月経の原因となっている方もいらっしゃいます。
月経不順に気付いたら、まずは、自分自身の適切な体重を調べ、標準範囲内に体重を維持するように、食生活や運動習慣を見直すようにしましょう。