院長コラム

妊娠中・分娩後のうつ状態

「憂うつで気分がはれず、楽しくない」といった抑うつ気分、「好きだったことにも興味が持てず、何もやりたくない」といった意欲・興味・関心の低下が2週間以上続き、生活に支障をきたす場合は、うつ状態になっている可能性があります。
今回は「女性心身医学」(2022年11月)を参考に、妊娠中・分娩後のうつ状態についてお伝えします。

 

妊娠期のうつ病

妊娠は人生において最も大きな出来事の一つですが、うつ病になりやすい時期でもあります。実は、8~12人に1人は経験しているといわれています。
特に妊娠初期に多く見られ、予期せぬ妊娠の場合や、パートナーとの関係が上手くいってないなど、心理的な要因が影響している可能性もあります。
妊娠期うつ病の方は、産後にもうつ病となるリスクが高いため、当院では早めにメンタルクリニックへの紹介や所轄保健所への情報提供を積極的に行っています。

 

出産後のマタニティブルーズ

出産後は急激な女性ホルモンの減少、出産・育児による不安感や疲労感、環境の大きな変化などに見舞われます。
そのため、産後数日より情緒不安や抑うつなど、一時的なメンタルの不調がみられることがあります。
多くは2週間以内に軽快する生理的なものであるため、必ずしも治療の必要はありませんが、当院では人参養栄湯、女神散などの漢方薬を用いることがあります。

 

産後うつ病

産後うつ病は、産後数週から1年以内に発症するものをいいます。日本では、産後の方の5~10%にみられるといわれ、マタニティブルーズから移行することもあります。
当院では、産後2週間健診と1か月健診の際、「エジンバラ産後うつ病自己評価表(EPDS)」によりスクリーニングを行っています。
助産師の面談やEPDSの点数で産後抑うつ傾向があると判断された場合は、メンタルクリニックへ紹介し、所轄保健所へも情報提供を行います。

 

妊娠中や授乳中であっても、向精神薬の服用が必要な場合があります。
特に妊娠前から服用されている場合、妊娠が確認されたからといって、自己判断による薬剤の減量・中止はしないようお願い致します。
不安な事がございましたら、必ずかかりつけのメンタルクリニックの先生にご相談下さい。