院長コラム

OC・LEP(いわゆる低用量ピル)服用中の血栓予防について

避妊の目的で低用量経口避妊薬(OC)、あるいは月経困難症治療の目的で低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)を服用されている女性は、最近増えてきました。
ただし、OC・LEPにはメリットだけでなく、デメリットも存在します。その一つは血栓症です。血栓症とは、血管の中に“血の塊”ができてしまう状態で、放っておくと命に影響を及ぼす怖い病気です。
先日、OC・LEPと血栓症についての講演会がありましたので、その内容の一部と「OC・LEPガイドライン2020年度版」を参考にしつつ、私見も交えながら、OC・LEP服用中の血栓予防について情報を共有したいと思います。

 

血栓症を疑う症状

 まず、血栓症が疑われる症状を整理します。

  • 強いふくらはぎの痛み(むくみ、握ると痛い、赤くなっているなど)
  • 激しい腹痛
  • 激しい胸痛(息苦しさ・押しつぶされるような痛み)
  • 激しい頭痛
  • 視力や言葉の異常(見えにくいところがある・視野が狭い・呂律が回らない・痙攣など)

    このような症状が現れましたら、OC・LEPを処方された施設、または救急施設などにご連絡下さい。

 

血栓予防のため“3時間以上”の座位は避ける

長時間の同一姿勢による不動状態では、特に下肢の深部静脈に血栓ができやすくなります。先日の講演会では、肥満、喫煙、高年齢に次いで、3時間以上の座位が血栓症のハイリスクとのことです。特に以下のケースは注意しましょう。

  • 長距離移動:特に、渋滞に巻き込まれたバスや乗用車での旅行ではサービスエリアに寄れず、予想以上に長時間座ったままの状態で過ごさざるを得なくなる可能性があります。その上、トイレにいかなくて済むように飲水を控えてしまっていると、血液がドロドロになり、さらに血栓症リスクが高まります
  • 長時間の観劇:長い映画やコンサート、演劇などは、一旦始まってしまうとなかなか動くことはできません。特に女性の観客が多い宝塚歌劇などは、休憩中のトイレが混雑するため飲水を控える方もいらっしゃるようですが、非常に危険です。
  • スポーツ観戦:長時間の競技では、決定的瞬間を見逃さぬよう、じっと座って観戦する場合もあります。また、ビールなどを飲みながら観戦する場合、アルコールは水と異なり、血管内は脱水になる傾向があります。その結果、血液が濃くなって、さらに血栓ができやすくなります。
  • 試験勉強:入試や資格試験などの試験日に月経が重ならないよう、OC・LEPで出血をコントロールされている方もいらっしゃいます。ただし、一心不乱に長時間机に向かって勉強し過ぎると血栓症になってしまい、残念ながら試験自体受けることができなくなってしまいます。勉強中でも、適度な水分補給と軽い運動を忘れないようにしましょう。

 

OC・LEPを服用されている方は、長時間の不動姿勢が予想される場合、脱水にならないようにこまめに水分(お酒ではなく)を摂る様にしましょう。
また、座席座ったままでも、足首の背屈や回転、足指や踵の上下運動を1時間ごとに3~5分行うことも血栓予防になるそうです。
さらに、膝下の弾性ストッキングは血栓予防に有効ですので、可能であれば、ご旅行や観劇の際、ご着用頂くのもいいかもしれません。