院長コラム

子宮筋腫や子宮腺筋症と診断された方は貧血の検査を

子宮筋腫や子宮腺筋症などにより過多月経、過長月経をきたしている方は少なくありません。
ただし、疲労感やめまい、動悸、息切れなどの自覚症状を認めないため、貧血の検査をしていない方もいらっしゃるようです。
今回は、貯蔵鉄に注目した、子宮筋腫や子宮腺筋症に対する診察の流れについてお伝えします。

 

子宮筋腫・子宮腺筋症の方には血液検査で貧血のチェック

当院では、過多月経、過長月経がある方はもちろん、子宮がん検診や月経痛・下腹部痛を主訴にいらした方には、原則として超音波検査を行います。
その結果、子宮内膜を圧迫している子宮筋腫や、明らかな子宮壁の肥厚がみられる子宮腺筋症が認められた場合、経血量が多いとの自覚がない方であっても、血液検査でヘモグロビン(貧血の指標)、血清フェリチン(貯蔵鉄の指標)を調べるようにしています。

 

鉄欠乏性貧血・鉄欠乏症の診断

ヘモグロビン:12g/dl未満、血清フェリチン:12ng/ml未満を鉄欠乏性貧血として、積極的に鉄剤による治療を行います。
また、ヘモグロビン:12g/dl以上で貧血ではないものの、血清フェリチン:12ng/ml未満の場合は鉄欠乏症として治療対象としています。
ちなみに、血清フェリチン:12ng/ml以上、25ng/ml未満は“鉄の減少”、25ng/ml以上、250ng/ml未満は“正常”、250ng/ml以上、500ng/ml未満は“鉄の増加”、500ng/ml以上を“鉄過剰”と判定されており、正常範囲まで血清フェリチン(貯蔵鉄)を増加させることを治療目標としています。

 

当院で主に用いる治療薬

第一選択として、内服薬を用います。一般的に鉄剤の内服薬は、胃痛、嘔気、便秘、下痢といった消化器症状が副作用として認められます。
当院では、鉄剤の中でも比較的副作用の少ない「リオナ錠250㎎」(1日1回2錠食直後)を処方することが多く、漢方薬の「人参養栄湯」(1日7.5g)を使用することもあります。
どうしても内服できない方や、重症貧血の方には、「フェインジェクト静注500㎎」を週一回静注(原則1,500㎎まで)行います。

 

貧血の治療はあくまでも対症療法であり、多くの場合、子宮筋腫や子宮腺筋症に対する治療を併用します。
治療内容や治療期間は、子宮筋腫や子宮腺筋症の状態、症状や年齢、妊娠希望の有無などを参考に決定します。
子宮筋腫や子宮腺筋症と診断された方で、貧血の検査を行った事がない方は、是非一度血液検査でヘモグロビンと血清フェリチンを調べてみて下さい。