院長コラム

40歳以上で不正出血がみられたら、子宮体がん検査をお勧めします

子宮体がんの患者さんは近年増加しており、2007年以降は子宮頚がん(浸潤がん)の頻度を上回っています。体がんの好発年齢は50代であり、患者さんの約75%は閉経後女性です。ただし、40歳未満の若年体がん例も体がん全体の約5%を占めるといわれていますので、注意は必要です。
今回は、「女性医学ガイドブック 更年期医療編2019年度」(日本女性医学学会)、「産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2017」(日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会 編集・監修)などを参考に、当院での子宮体がん検査について説明します。

 

 

子宮体がん検査の対象者

子宮体がんの主な症状として不正出血が挙げられます。そのため「最近6か月以内に不正出血(閉経後出血など)、月経異常(過多月経・月経不順など)および褐色帯下のいずれかの症状がみられた方」に対して、子宮体がん検査が検討されます。

また、子宮体がんの高リスク因子として、未婚・不妊・閉経後・初婚初妊の年齢が高い・妊娠出産数が少ない・30歳以降の月経不順・ホルモン補充療法中・乳がん術後の内分泌療法中・糖尿病の既往・高血圧の既往・肥満などが言われています。当院では、これらの因子の有無も参考にしながら、子宮体がん検査を行なっています。

 

 

子宮体がんの検査方法

まず、子宮内膜細胞診が基本的な検査となります。当院では「ソフトサイト」という細くて軟らかい内膜細胞採取器具を子宮内に挿入し、子宮内膜の表面を擦過し、細胞を採取します。検査の際、下腹部痛を認める方も多いですが、ほとんどが一過性で次第に痛みはおさまります。

また、経腟超音波検査を用いて子宮内膜の厚みを測ります。閉経後女性で、子宮内膜が5mm以上肥厚している場合は、出血がみられなくても子宮内膜細胞診を行なうことがあります。

子宮内膜細胞診の結果が「陰性」ではなかった場合や子宮内膜の肥厚が著しい場合は子宮内膜組織診を行ないます。細いキュレットと呼ばれる特殊な匙を子宮内に挿入し、数か所から子宮内膜を少量採取します。

 

 

子宮内膜細胞診・組織診で異常と診断された方

子宮内膜細胞診で「子宮体がん」、あるいは子宮内膜組織診で「子宮内膜増殖症」「子宮内膜異型増殖症」「子宮体がん」と診断された場合は、精査あるいは治療が必要となります。
その場合は、高次施設での診療が望ましいため、「東京医療センター」「東邦大学医療センター大橋病院」「慶応義塾大学病院」などをご紹介致します。

 

 

不正出血がみられましたら、婦人科を受診して下さい。特に50歳前後の方の場合、閉経前の不安定なホルモン環境に伴う不正出血なのか、子宮体がんによる出血であるのかは、診察・検査をしてみないと鑑別できません。
多少痛みを伴うと思いますが、病状が悪化する前に子宮体がん検査をされることお勧めします。