院長コラム

当院における妊娠中の花粉症対策

2020年の今年、花粉の飛散時期が早く飛散量も多いのか、当院でも連日花粉症に悩まされている妊婦さんが受診されています。
今回は、「妊娠と授乳」(南山堂)、「周産期医学2018年1月号 産科の薬物療法」(東京医学社)などを参考に、当院での花粉症の妊婦さんへの対応について説明します。

 

 

妊娠12週までの軽症者は「生活の見直し」から

妊娠12週までは「すべての薬剤が絶対に胎児へ悪影響を及ぼさない」とは断言できません。したがって、症状があまり重くなければ、薬物を使用しないに越した事はありません。まずは、花粉をできるだけ避けるように、生活を見直すことから初めて頂きます。

○ 花粉情報に注意し、飛散の多い時には外出を控え、窓や戸を閉める。
○ 外出するときはマスク、めがねを着用する。
○ 帰宅時に、衣服や髪の毛の花粉をよく払い、洗顔、うがいなどを励行する。

それでも症状が改善しないのであれば、次の点鼻薬・点眼薬を使用し、鼻炎が増悪すれば漢方薬をお勧めしています。

 

 

初めて花粉症になった方は「点鼻薬・点眼薬・漢方薬」から

点鼻薬・点眼薬は胎児への影響はほとんどないと考えられますので、妊婦さんでも心配せずに使用できます。当院では特に安全性が高いといわれている「インタール点鼻薬・点眼薬」を処方することが多いですが、効果が不良な場合は内服薬を併用します。

内服薬として、まずは漢方薬をお勧めしています。鼻汁やくしゃみが辛いときには「小青竜湯」を主に処方しますが、鼻閉感が強いときには「葛根湯加川キュウ辛夷」を用いることがあります。

それでも改善しない場合は、安全性が高いといわれている抗ヒスタミン薬を使用します。

 

 

毎年花粉症に悩む方は自分に合った「抗アレルギー薬」から

毎年花粉症に悩まされ、抗ヒスタミン薬などを使用している場合、すでに花粉を避ける生活はおくられていると思います。また、点鼻薬・点眼薬だけで改善することもあまり期待できません。妊娠初期には「小青竜湯」からお勧めすることが多いですが、ご自身にあった抗アレルギー薬があるのであれは、それが妊婦さんに禁忌ではない限り、あえてその薬剤の服用を勧めています。

また、漢方療法で改善しない方にも、抗アレルギー薬を処方しています。当院で処方する事が多い薬剤は、第二世代ヒスタミンH1受容体拮抗薬という種類のもので、「ザイザル」「アレロック」「アレグラ」「クラリチン」などがあります。どれも、胎児への影響はほとんどないと考えられます。もちろん、点鼻薬、点眼薬、漢方薬と併用することも可能です。

 

 

新型コロナウイルス感染の影響でマスクの品切れ状態が続いているため、花粉症をお持ちの方にとって、今年は特に辛いのではないでしょうか。
妊娠中、服用する薬剤に注意することはとても大切なことですが、生活に支障をきたす程の症状があるならば、我慢せず、比較的安全と思われる薬剤を服用して頂くことをお勧めします。少しでも症状を和らげ、辛い季節を乗り切りましょう。