院長コラム
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日本人が生涯のうち尿管結石になる確率は約10%で、男性では7人に一人、女性では15人に1人が罹患するといわれています。確かに男性に比べると女性は半分程度ですが、食生活の欧米化などにより、今後更に増えることが予想されています。
今回は、“分娩の痛みより、はるかに強い”といわれている尿管結石について、厚生中央病院泌尿器科の先生がお書きになられた記事(厚生中央病院だより2019年春「尿管結石について」)、「ガイドライン外来診療2018 尿路結石症」などを参考に、情報を共有したいと思います。
尿管結石の症状・診断
突然の激しい片側性の腰背部痛、側腹部痛が特徴的です。血尿、嘔気などを認め、腎盂腎炎など感染を併発すると発熱することがあります。
診断は、尿検査および超音波検査や腎尿管膀胱部単純X線撮影などの各種画像検査で行ないます。ちなみに、妊婦さんの場合、超音波検査が第一選択となりますが、必要であれば妊婦さんでも腎尿管膀胱部単純X線撮影は可能です。
尿管結石の成分・原因
約80%がシュウ酸カルシウム結石で、尿にシュウ酸が多いと尿中のカルシウムと結合して結石ができます。
また、高尿酸血症や痛風に合併する結石は尿酸結石といわれています。
結石ができやすい人は、動物性タンパク質の摂取量が多い、野菜やカルシウムの摂取量が少ない(体が酸性に傾き、シュウ酸が作られやすくなるそうです)、夕食中心の食生活、食事から就寝までの時間が短い、水分摂取不足、運動不足、肥満などがいわれています。また、結石ができやすい食べ物は、肉類(魚以外)、ほうれん草、小松菜、たけのこ、チョコレート、ナッツ類、紅茶、コーヒー、レバー、干物、ビールなどです。これらを召し上がる時は程々にしましょう。
尿管結石の治療
・ 自然排石
大きさが5mm以下の結石は排石される可能性がありますので、積極的に水分を摂取しましょう。
・ 薬物療法
疼痛発作時の治療として、ボルタレンなどの消炎鎮痛剤の内服や坐薬を使用します。ただし、妊娠後期にはアセトアミノフェン(カロナール)の内服薬を第一選択とします。
それでも疼痛がコントロールできないときにはソセゴンの筋注または静注を行なうこともあります。
また、排石を促進する薬物として、ウロカルン錠という内服薬や漢方薬の猪苓湯があります。
・ 手術療法
大きさが5~10mm以上の結石の場合は自然排石が困難であるため、泌尿器科にて診察頂きます。手術療法として、体の外から衝撃波を与え、腎・尿管結石を破砕する「体外衝撃波結石破砕術」と、尿管鏡を尿道から挿入し、結石をレーザーで破砕する「内視鏡下結石破砕術」があるそうです。
尿管結石の予防
・ 飲水励行
尿管結石の予防には、何よりも水分摂取が大切です。食事以外に1日2000ml以上摂取することをお勧めします。
・ 結石になりにくい食べ物
野菜類を多くした和食中心の食事が望ましく、適度な食塩摂取制限も有効です。また、カルシウムを十分摂取すると、腸内でシュウ酸と結びつくため、それらが便として排泄しやすくなります。
・ 生活リズムの改善
結石は夜に作られるため、夕食から就寝まで4時間以上空けることが理想といわれています。また、高血圧症や糖尿病などの生活習慣病の治療・予防自体が、結石予防になるため、食生活、運動習慣など生活習慣を見直すことが大切です。
尿管結石は男性の病気というイメージがあるかもしれませんが、妊婦さんが罹患することがあります。また、肥満患者さんでの尿管結石に対する危険度は、むしろ男性よりも女性の方が高いといわれています。
特に、女性の尿管結石好発年齢である50歳代の方は、くれぐれも生活習慣病にご注意下さい。