院長コラム

当院における人工妊娠中期中絶の対応

当院では、母体保護法を遵守する形で、妊娠12週以上、22週未満の妊娠中期中絶を行なっています。ただし、母体合併症がある方、前置胎盤の方、単なる妊娠中絶を希望されている方についてはお断りしています。
今回は、当院での適応と手術の流れなどについてお伝えします。

 

 

妊娠12週未満の中絶手術との違い

妊娠12週未満の場合、手術当日の9時に禁食で受診頂き、子宮頚管拡張処置を行い、13時頃に手術となります。手術は静脈麻酔で眠っている間に、プラスチック製または金属性の吸引管を用いた吸引法で行ないます。術後異常なければ、同日の16~17時頃の退院になります。尚、費用は約150,000~200,000円です。

一方、妊娠12週以降になると、胎児、胎盤、臍帯などの妊娠が大きくなるため、吸引管で手術を行なうことはできません。子宮頚管を丸1日かけて拡張し、翌日子宮収縮作用の腟錠を用いて、赤ちゃんと胎盤を娩出します。入院も1泊2日または2泊3日となり、「死産届け」「埋葬」などの必要な事務手続きが増えます。尚、費用は約200,000~300,000円となります。

 

 

入院初日:手術前日

9時頃ご入院頂きます。9時、12時、18時の3回に分けて、ラミセル(太さ3mmと5mmの特別な硬いスポンジ)、ラミナリア(水分を含むとゆっくり膨大する硬く細い棒)を用いて子宮頚管を拡張します。

 

入院2日目:手術当日

手術の際、麻酔を用いるため朝から禁飲食となります。

「プレグランディン」という子宮頚管拡張作用および子宮収縮作用を持つホルモン腟錠を、7時から1錠ずつ3時間ごとに挿入します。平均3~4錠の使用で児が娩出されます。その後、静脈麻酔で眠って頂いている間に、胎盤や妊娠組織を掻爬します。

13時頃までに児が娩出された場合は、17時頃に診察し、異常がなければ同日のご退院が可能です。

尚、子宮収縮剤、乳汁分泌抑制剤の内服が開始になります。

 

入院3日目:手術翌日

2日目の手術が16時以降になった場合は、もう一泊ご入院頂き、3日目の8~9時頃に診察後、ご退院となります。

 

 

事務手続きについて

妊娠12週以降の場合は死産届と埋葬が必要になります。術後こちらから埋葬許可申請書と死産届をお渡し致しますので、ご家族の方など、付き添いの方に区役所(または出張所)に提出して頂きます(費用50,000円前後)。その際、埋葬許可書を渡されますのでお受け取り下さい。
埋葬の手続きは当院で対応し、お骨のお引取りをご希望の方は、次回外来でお渡しします。

 

 

術後の流れ

術後1週間で診察し、子宮内の血液や妊娠組織の貯留を確認します。もし異常がなければ、経口避妊薬などを処方致します。しっかり避妊しましょう。

 

 

妊娠の継続が母体の健康を損ねるため、妊娠継続が困難な場合のみ、当院では中絶手術を扱っていますが、できるだけ早い週数、せめて妊娠12週未満で手術することが望ましいです。
セックスしたあと3~4週間しても月経が来なければ、妊娠検査薬で確認されることをお勧めします。