院長コラム

高プロラクチン血症の診察の流れ

プロラクチンは脳の下垂体で産生されるホルモンで、乳腺の発達や乳汁分泌に関与しています。何らかの原因でプロラクチンの産生・分泌が過剰になると、高プロラクチン血症となり、乳汁分泌や無月経といった症状がみられることがあります。
今回は、当院における高プロラクチン血症の診察の流れについてお伝えします。

 

高プロラクチン血症の診断

月経不順や無月経、乳汁分泌などを主訴にご来院された方に対して、プロラクチンをはじめ各種ホルモン検査を行います。
当院における血中プロラクチン値の基準値は6.1~30.5ng/ml であり、上限を超えた場合を「高プロラクチン血症」と診断します。
ただし、ストレスや食事によって一過性に上昇することがあるため、50ng/ml未満の場合は少なくとも2回測定することが勧められています。

 

原因別の対応

高プロラクチン血症の原因として、様々な疾患が知られています。
血中プロラクチン値が80ng/ml以上、特に100 ng/mlを超える場合は、プロラクチンを産生する下垂体腺腫の可能性があるため、東京医療センターなど近隣の脳神経外科へ紹介しています。
甲状腺機能低下症も高プロラクチン血症の原因となります。甲状腺刺激ホルモン(TSH)が高値、甲状腺ホルモンが低値の場合、近隣の内分泌ご専門の内科クリニックへ紹介させて頂いています。
また、向精神薬や制吐剤など、薬剤の副作用として高プロラクチン血症となる場合も少なくありません。他施設で処方されている薬剤については、処方医と情報を共有し、当該薬剤の減量や他剤への切り替えなどを相談させて頂く事もあります。

 

高プロラクチン血症の薬物療法

プロラクチン産生腫瘍、甲状腺機能低下症、薬剤の副作用でない場合、ドパミン作動薬という薬剤を用いて治療を行います。
当院では「カバサール」を週1回0.25㎎から投与を開始し、2週間以上の間隔で、0.25㎎ずつ増やして維持量を決めます(上限1㎎)。

 

高プロラクチン血症の患者さんは、一般の方で0.4%、卵巣機能異常の女性では9~17%、無月経女性では22%といわれています。
性成熟期女性で月経不順や無月経の方は、妊娠の希望の有無にかかわらず、是非婦人科を受診されることをお勧めします。
各種ホルモン検査をきっかけに、脳腫瘍が早期に発見されるかもしれません。