院長コラム

過多月経の診断と治療

正常の月経は「持続期間が3~7日、経血量が20~140ml」とされていますが、子宮筋腫などの疾患があると、過長月経・過多月経となり生活に支障をきたす場合や、鉄欠乏性貧血になってしまうことがあります。
今回は、「女性医学ガイドブック 思春期・性成熟期編 2016年度版」などを参考に、過多月経の診断と治療について説明致します。

 

過多月経の診断

わが国では「経血量の合計が140ml以上」を過多月経と定義されています。
また、経血量が80mlを超えると、60%以上の女性が貧血になるとの報告があります。
ただし、実際の臨床の場で経血量を計測することはありません。
過多月経の目安として、①生理用品を1日に5回以上取り替える、②1時間以内に生理用品を取り替えることがある、③大きさ1cm以上の血液の塊が出る、④夜用ナプキンを昼間でも使用する、⑤夜用ナプキンでもシーツを汚してしまう、などが言われています。

 

過多月経の主な原因

過多月経の原因となる疾患は様々ですが、最も多いには子宮筋腫・子宮腺筋症・子宮内膜ポリープといった子宮の病変です。
これらの疾患では子宮内膜の面積が広がるため、月経として剥がれ落ちる子宮内膜量が増加し、過多月経となります。
その他、卵巣機能や甲状腺機能の異常、血液凝固障害などが原因になることもあり、必要に応じて内分泌内科や血液内科の専門医へ紹介することがあります。

 

当院での治療

月経中の出血を抑えるため、トランサミン錠などの止血剤を投与します。
また、子宮内膜を薄くさせるため、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP:月経困難症があれば保険適応)や子宮内黄体ホルモン放出システム(LNG-IUS)を使用することがあります。
子宮筋腫や子宮腺筋症を認める場合、これらは女性ホルモンであるエストロゲンが原因で大きくなることから、人工的に閉経状態にする治療(偽閉経療法)を行うことがあります(原則として6か月間)。
もちろん、血液検査で鉄欠乏性貧血、または鉄欠乏状態と診断された場合は、鉄剤としてリオナ錠などの内服薬や、フェインジェクト注などの注射薬を使用します。

 

月経の量を他人と比べることはあまりないかも知れませんが、日頃から経血が多いと感じている方は、是非婦人科を受診しましょう。
また、健康診断で貧血を指摘された方の中には、過多月経が原因である場合も少なくありません。
貧血を改善することはもちろん、過多月経について精査・治療することも大変重要です。