院長コラム

風邪に使用する漢方薬

風邪とは、様々なウイルスが原因で起こる急性の鼻・咽頭・喉頭などの炎症(上気道炎)です。通常は、鼻汁、鼻閉、咽頭痛、発熱、頭痛、全身倦怠感などの症状がみられ、炎症が気管、気管支に及ぶと咳や痰がみられます。治療は対処療法となりますが、漢方薬が奏功することも少なくありません。
今回は、株式会社ツムラさんの資料などを参考に、風邪に使用する漢方薬について情報を共有したいと思います。

 

風邪の初期(急性期)に用いる漢方薬

風邪の初期は、鼻汁、咽頭痛、咳などがみられ、3日間ほど安静にしているだけでも、自身の免疫力によって回復することがほとんどです。漢方薬には、体の免疫システムをサポートし、ウイルスの増殖を抑制して、炎症や発熱を抑える作用があるそうです。

 

  • 葛根湯(カッコントウ)

漢方薬の中で最も有名な葛根湯は、「風邪薬」といったイメージが強いかもしれません。葛根湯の適応は、比較的体力がある方で、38度程度の発熱、寒気、頭痛、肩こりなどを伴う場合です。当院では3日程度の服薬で改善しなければ他剤へ切り替えています。

 

  • 麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)

比較的虚弱な方の風邪のひき始めには、麻黄附子細辛湯がお勧めです。特に四肢が冷えるご高齢の方に有用とのことです。

 

  • 小青竜湯(ショウセイリュウトウ)

体力が中等度以下の方で、鼻汁やくしゃみが出る風邪の初期には、小青竜湯が効果的です。アレルギー性鼻炎などにも適応があり、その場合は数週間処方することもあります。

 

風邪の後期(遷延期)に用いる漢方薬

風邪は通常3~4日で軽快しますが、それ以上長引く場合は、「遷延期」に入ったと考えられます。もともと体力がない方が長引きやすく、全身倦怠感や食欲不振などの症状もみられます。

 

  • 補中益気湯(ホチュウエッキトウ)

風邪が長引き、全身倦怠感・微熱・食欲不振が続く場合は、補中益気湯がお勧めです。胃腸の働きを高めて体力を回復させるこの漢方薬は、女性と相性がよく、当院でも最も処方されている漢方薬の一つです。

 

  • 麦門冬湯(バクモンドウトウ)

痰のきれがよくない乾いた咳の場合には、麦門冬湯が非常に有用です。西洋薬の咳止めや痰の薬の服用に抵抗がある妊婦さんにも、処方しやすい漢方薬です。

 

これからの季節、寒さが本格的になります。
体が冷えると血行不良となり、免疫力も低下するため、風邪をひきやすくなります。
日頃から入浴や適度な運動に心掛け、睡眠・休息をしっかりとって免疫力を下げないようにしましょう。