院長コラム

なぜエストロゲンは骨に影響を及ぼすのか?

卵巣から分泌される女性ホルモンのエストロゲンは、骨の代謝に影響を及ぼし、骨量を増やすことが知られています。
エストロゲンといえば、生殖に関係しているイメージがあると思いますが、骨と関連していることを意外に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
今回、「エストロゲンと女性のヘルスケア」(メジカルビュー社)を参考に、エストロゲンの骨への影響について説明します。

 

エストロゲンは骨量を増やし、カルシウムを貯蓄する

骨は、身体を支える役割や重要な臓器を保護する役割のほか、カルシウムの貯蔵と供給という機能も持っています。日頃から私たちは、全身にカルシウムを送るため骨を削り(骨吸収)、骨量のバランスを保つため新たに骨を作っています(骨形成)。
実はエストロゲンには、骨吸収を抑え、骨形成を促す作用があります。女性の一生で考えると、思春期にエストロゲン分泌が急増する際、骨量も増加し、20歳前後には生涯で最大の骨量となります。その後、骨量はほぼ維持されますが、更年期に入りエストロゲンの分泌が低下すると、骨吸収が促進されて骨量が低下します。閉経後に骨粗しょう症になりやすいのは、これが理由です。

 

赤ちゃんのため妊娠期・授乳期に必要なカルシウム

では、なぜ20歳までに骨量を最大にする必要があるのでしょうか。それは、来たる妊娠・授乳に備えてカルシウムを貯蓄するためです。
妊娠中は胎児の骨格の発育のため、非妊娠の50%程度カルシウムの必要量が増えるといわれています。また、妊娠中はエストロゲンをはじめ、腸からのカルシウム吸収を高めるビタミンDや骨吸収を促す副甲状腺ホルモンが胎盤から分泌されます。
その結果、胎児にカルシウムが安定供給される反面、妊娠中は骨のカルシウムの出入りが激しくなります。
分娩後、胎盤が娩出されるとエストロゲンが急激に減少し、骨吸収が活発になるめ、血中にカルシウムが放出されやすくなります。
授乳期のカルシウム必要量は非妊娠時の2倍になりますが、これは多量のカルシウムを血中から母乳に移行させ、授乳を通じて赤ちゃんを成長させるためです。

 

エストロゲンの分泌に影響される女性の一生は、骨形成と骨吸収の人生でもあります。
女性は、思春期にはしっかり骨量を増やし、妊娠期・授乳期には赤ちゃんのために十分なカルシウム摂取に心掛け、更年期には骨粗しょう症に気を付ける必要があります。
当院では、女性の骨の健康に関しても、引き続きサポートして参ります。