院長コラム

閉経間近の女性における子宮筋腫への対応

通常閉経後には子宮筋腫は縮小するため、閉経間近と思われる40代後半~50代前半の女性にとって、自然閉経までの時期をどのように乗り切っていくかが、非常に重要になります。
今回、先日参加しました「関東連合産科婦人科学会学術集会」での講演内容を参考に、閉経間近の女性における子宮筋腫への対応について説明します。

 

偽閉経療法による“逃げ込み”

超音波検査やMRI検査にて悪性が疑われる場合は、子宮全摘術が望ましいと考え高次施設へ紹介しています。
ただし、良性の筋腫と思われる方であれば、かなり筋腫が大きい場合や過多月経・月経困難症が強い場合であっても、ご本人のご希望によって手術ではなく薬物療法を行うことも少なくありません。
その際、「レルミナ錠」の連日服用や、「リュープロレリン注1.88」の月一回の皮下注射などで人工的に閉経状態にします。
このような治療を“偽閉経療法”といい、子宮筋腫縮小に関してかなり効果的と思われます。
ただし、長期間の治療で骨粗しょう症のリスクが高まるため、原則として6か月間しか施行できず、治療後も普通に月経が再開してしまい、なかなか自然閉経まで“逃げ込めない”方もいらっしゃいます。

 

子宮動脈塞栓術(UAE)も選択肢の一つに

子宮筋腫は、子宮動脈によって栄養が補給されて増大します。そのため、子宮動脈に詰め物を詰めることによって血流を遮断し、“兵糧攻め”にすることで子宮筋腫を縮小させることが期待できます。これを子宮動脈塞栓術(UAE)といいます。
最近、“詰め物”の開発が進み、有効性が高まるとともに、副作用が軽減しているようです。
ただし、将来妊娠を希望されている方はUAEを受けることができません。
さらに、UAE後に子宮全摘術を余儀なくされるケースも一定の確率で起こり得ます。
それでも、UAEは比較的低侵襲であり、4~5日間の入院で済むことが多いようです。
また、一度施術すると数か月で効果を実感し、多くの場合5~7年は再増大せずに満足度も高いとのことです。
このことから、当院では閉経間近の方の巨大子宮筋腫に対して、手術療法、薬物療法とともにUAEも治療の選択肢の一つとして考えております。

 

UAEをされている施設は限られていますが、当院から紹介させて頂くなら、今のところ東京医科大学病院や順天堂医院などを考えています。
尚、偽閉経療法を行っている場合は、治療終了後3か月はUAEをすることができません。
その間に月経困難症や過多月経がみられた場合は、止血剤・漢方薬などホルモン療法以外の方法で対応させて頂きます。