院長コラム

過多月経や妊娠・分娩に伴う鉄欠乏性貧血への治療

本来ヒトの体は、鉄の量を一定に保つように需要と供給のバランスが保たれています。
しかし、過多月経・妊娠・分娩により鉄の喪失・需要が増えると、体内での鉄が不足します。
鉄が不足している状態は、異常事態と考えられますので、原則として全て治療対象となります。
今回は、「あすか製薬株式会社」作成のパンフレットなどを参考に、鉄欠乏性貧血の治療について情報共有したいと思います。

過多月経による貧血
一周期当たりの経血量が140mlを超える場合を過多月経といい、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープなどの病気が過多月経の要因の一つとなっています。
通常、1日に使う生理用品は6セット以内と言われていますが、7セット以上必要な場合や日中でも夜用ナプキンを常用せざるを得ない場合などは、過多月経と考えられます。
その際は、鉄欠乏性貧血治療だけでなく、過多月経の原因となっている疾患の治療を合わせて行う必要があります。

〇妊娠に伴う貧血
妊娠中は、赤ちゃんへの鉄の移行や循環血流量の増加に伴う血液の希釈などにより、鉄欠乏性貧血になりやすいことが知られています。
また、貧血が進行し血液がサラサラとなった状態で分娩すると、出血量が多くなってしまうため、妊娠中の貧血治療は非常に重要です。

〇分娩後の貧血
分娩時出血の影響や母乳への鉄の移行など、分娩後も鉄欠乏性貧血になりやすい時期と言えます。
特に、分娩後は女性ホルモンの急激な低下の影響や、分娩・授乳・育児による心身の疲労から抑うつ状態になりやすいのですが、貧血があると更に抑うつ症状が悪化することが知られてます。

当院では、鉄欠乏性貧血が疑われる方に対して、貧血や貯蔵鉄を調べる血液検査を積極的に行っています。
治療薬としては「リオナ錠」(内服薬)、「モノヴァー静注」(点滴静注薬)を中心に、人参養栄湯などの漢方薬を併用することもあります。
健康診断で貧血を指摘された方、経血が多いと思われる方、動悸・息切れ・疲労感といった症状がみられる方は、是非婦人科を受診し婦人科的疾患の有無を確認してもらい、積極的に治療して頂きましょう。