院長コラム

妊娠高血圧症候群の既往のある中高年女性に対する健康管理

妊娠中に高血圧になってしまう状態を「妊娠高血圧症候群」といい、母児ともに非常に危険な状況を招く恐れがあります。
そのため、予防や早期発見が重要であり、様々な取り組みが行われています。
一方で、妊娠高血圧症候群を経験した女性は、その後様々な疾患になりやすいことも知られています。
先日、東京産婦人科医会主催の講演会で、東京大学総合周産母子センターの先生より、妊娠高血圧症候群に関するお話がありました。
今回は、そこでのお話や、「妊娠高血圧症候群の診療指針2021」を参考にしながら、妊娠高血圧症候群の既往のある中高年女性に対する健康管理ついて、情報共有したいと思います。

妊娠高血圧症候群
妊娠中の血圧も非妊娠時と同様に、収縮期血圧(上の血圧)が140mmHg 以上、または拡張期血圧(下の血圧)が90mmH以上の場合を「高血圧」と診断します。
尚、収縮期血圧が160mmHg以上、または拡張期血圧が110mmHg以上の場合を「重症」としています。

〇妊娠高血圧症候群既往の女性が注意すべき疾患
妊娠高血圧症候群になったことがある女性は、次回の妊娠でも再発リスクが高くなるため、十分な管理が必要です。
また、妊娠を予定していない女性も、長期的に生活習慣病のリスクが高くなることが知られています。特に、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓と、それらに引き続く脳血管疾患に注意が必要です。

〇これらの疾患を予防するために
適正な体重の維持、適切な運動習慣、バランスのとれた食生活、良質な睡眠、禁煙、節酒といった一般的な生活習慣の改善が必須です。
その上で、高血圧症を予防・早期発見するためには、血圧計を購入し、自宅での血圧計測を習慣化することが大切です。
更に、定期的に内科的な健康診断を受けて頂き、検査結果に異常が認められた場合は、放置せずに早めにかかりつけの内科を受診しましょう。

妊娠高血圧症候群という妊娠期の異常が、長い年月を経た中高年になっても、様々な悪影響を及ぼします。
中高年女性の健康管理の基本は「日々の適切な生活習慣」と「定期的な健康診断」です。
令和5年の年末にあたり、妊娠高血圧症候群の既往のある方はもちろん、そうでない女性も、これまでの生活習慣を見直して、令和6年は積極的に生活習慣を改善し、健康診断を受けるようにしましょう。