院長コラム

外陰皮膚に生じる細菌感染症

外陰部に発生する炎症性疾患のうち、皮膚表面に存在する細菌が原因の毛嚢炎(毛包炎)は、比較的よく見られる感染症の一つです。
今回は、毛嚢炎など外陰皮膚に生じる細菌感染症について説明します。

 

毛嚢炎(毛包炎)

毛嚢炎は、黄色ブドウ球菌やA群溶連菌などの細菌が毛穴(毛包)へ感染することで起きる炎症性疾患です。全身の皮膚に発生する可能性がありますが、中でも鼠径部・陰部・臀部は好発部位です。
タオルや着衣による“こすれ”、不適切な剃毛、発汗過多などが原因といわれており、糖尿病などの免疫低下状態も要因になります。
毛嚢炎は自然治癒することが多いため、必ずしも治療の必要はありません。当院では、疼痛などの症状が強く、拡大・進展する可能性がある場合には、抗菌薬含有の外用剤「ゲンタシン軟膏」を処方しています。

 

せつ・よう

「せつ」とは、一つの毛嚢炎が拡大し、膿瘍・発赤・圧痛・自発痛・局所熱感が強くなった状態をいいます。
また、「よう」とは、複数の毛嚢に生じた「せつ」が癒合し膿瘍を形成した状態で、局所症状だけでなく、発熱・倦怠感といった全身症状を認めます。
治療として、経口の抗生剤や切開排膿が一般的です。当院では、セフェム系抗生剤「メイアクト錠」、消炎鎮痛剤「ロキソニン錠」を4~7日間処方することが多く、漢方薬「排膿散及湯(ハイノウサンキュウトウ)」を併用する場合もあります。

 

蜂窩織炎

毛嚢炎が急速に進展し、広範囲の皮膚・皮下組織の炎症をきたしたものを蜂窩織炎といい、熱感・腫脹・疼痛を伴い発熱することがあります。
通常、黄色ブドウ球菌やA群溶連菌に効果のある抗生剤が用いられますが、膿瘍がみられる場合には切開し排膿します。
尚、当院ではペニシリン系またはセフェム系抗生剤の点滴投与を行うことがありますが、原則として蜂窩織炎が疑われた時点で、皮膚科へ紹介しております。

 

外陰部の毛嚢炎を予防するには、皮膚を傷つけないようにし、きつい下着を避け、下着の素材を刺激の少ないものにします。
また、入浴後は水分をしっかり拭き取り、排便後の処理も衛生的に注意しましょう。
もし、外陰部に“おでき”ができて、自然に改善しない時や拡大する場合には、婦人科または皮膚科を受診しましょう。