院長コラム

経口人工妊娠中絶薬(メフィーゴパック)の作用

2023年4月、わが国で初めて経口人工妊娠中絶薬(メフィーゴパック)が認可されました。子宮内に妊娠していることが確認され、母体保護法の条件をクリアしており、人工妊娠中絶を希望している妊娠9週0日までの妊婦さんが対象です。従来の手術法と比べて必ずしも手軽とは限りませんが、人工妊娠中絶法の選択肢が増えたことに間違いはありません。
メフィーゴパックは2つの薬剤のセットであり、1剤目服用してから36~48時間後に2剤目を使用します。
今回は、これら2剤の作用について、簡単に説明します。

1剤目:ミフェプリストン1

「ミフェプリストン」は抗黄体ホルモン剤で、黄体ホルモン作用に対抗する働きがあります。
妊娠を維持するには、排卵後に卵巣から分泌される黄体ホルモンが不可欠です。
反対に、黄体ホルモンの働きが弱くなれば、妊娠を維持することができなくなります。
「ミフェプリストン」が黄体ホルモンの働きを減弱させると、子宮内膜は受精卵にとって居心地の悪い状態になります。すると、妊娠が維持できなくなり、受精卵の成長がストップします。
尚、「ミフェプリストン」は妊娠9週0日(最終月経開始日・排卵日または胎児の大きさなどから算出)までに、医師の前で1錠服用しないといけません。

2剤目:ミソプロストール4

子宮内で成長が止まった受精卵を子宮外に排出するには、月経の時のように子宮が収縮する必要があります。
2剤目の「ミソプロストール」は、子宮筋を収縮させる作用と、子宮の出口(子宮頸管)を広げる(熟化)作用があります。
1錠目服用後、36~48時間に「ミソプロストール」を4錠使用します。これらを単に飲むのではなく、左右の歯茎と頬の間に2錠ずつ挟み、唾液でゆっくり30分かけて溶かします。
もし、30分たっても錠剤が残っている場合には、水と一緒に飲み込みます。

2錠目使用してから8時間以内に9割以上の方で中絶が完了します。
ただし、約1割の方は、薬剤のみでは妊娠組織が排出されず、結局手術が必要になるようです。
取り扱いの施設を受診し、薬物法と手術法のメリット、デメリットを直接伺った上で、人工妊娠中絶法を選択して下さい。