院長コラム

精神症状が主体の月経前症候群の治療

月経前症候群(PMS)とは、月経前3~10日の黄体期(高温期)の間続く精神的、身体的症状で、月経の発来とともに減退ないし消失するものをいいます。
月経を有する女性の70~90%は何らかの月経前症状を認め、日常生活に支障をきたす中等度異常のPMSは5~9%といわれています。
今回は、特に精神症状が主体であるPMSに対する治療法について説明します。

 

 

代表的なPMSの症状

ある報告によると、PMSの症状は150以上あるといわれていますが、中でも多い症状(頻度)は疲労感(92%)、イライラ(91%)、腹部膨満感(90%)、不安・緊張(89%)、乳房痛(85%)、情緒不安定(81%)、抑うつ(80%)とのことです。

通常、これら多彩な症状が症候群として見られますが、イライラや抑うつといった精神症状が主体のPMSに対しては、以下に挙げる3つの薬物療法が柱になります。

 

 

(1) 低用量エストロゲン・プロゲスチン(LEP)製剤:ヤーズフレックス

様々な種類があるLEP製剤ですが、月経困難症に保険適応があるドロスピレノン・エチニルエスタラジオール錠(ヤーズ配合錠)は、身体症状、精神症状の双方に有効性が認められています。

また、従来のヤーズ配合錠は4週間に1回月経様出血を起こさせる飲み方でしたが、2017年に認可されたヤーズフレックス配合錠は120日間実薬を連続して服用することが可能であるため、理論上月経の回数が減り、結果的にPMSに悩むことが激減することが期待できます。

 

 

(2) 抗うつ薬(SSRI):レクサプロ

軽度から中等度の抑うつが見られた場合は、SSRIという抗うつ剤が有効であるといわれています。SSRIは脳内の“幸せホルモン”といわれているセロトニンを増加させる作用があり、抑うつ状態やうつ病の治療に広く使用されています。

当院では、レクサプロというSSRIを1日1錠、黄体期の10~14日間処方することが多いですが、症状が強いときには継続的に服用して頂くこともあります。

 

 

(3) 漢方薬:加味逍遥散・抑肝散

様々な漢方薬が精神症状に用いられますが、抑うつ傾向が強い場合は加味逍遥散、イライラ感が強い場合には抑肝散が有用であるといわれています。

通常は抑うつが強い方でも、時折イライラする場合があります。そのような時には、加味逍遥散を継続しながら、抑肝散を屯用で服用して頂く様にします。

反対に、いつもイライラしている方には、抑肝散を継続しつつ、気分が落ち込む時には加味逍遥散を併用することがあります。

 

 

PMSの予防・治療には規則正しい生活、十分は睡眠、適度な運動習慣が不可欠ですが、精神症状が主体の場合、上記に挙げた薬物を中心に、単剤あるいは多剤併用で治療を進めて参ります。
PMSにお悩みの方は、是非ご来院下さい。