院長コラム

母体の食事と離乳食が児のアレルギーにどのように影響するか?

近年、乳幼児のアレルギー疾患の増加が著しく、その予防について様々な方法が言われています。以前は、妊娠中、授乳中の母親は、アレルギーの原因となりうる食物を制限することが勧められていましたが、最近の研究では、むしろ食物制限がアレルギー疾患発症を促進する、といった報告がされています。
今回は、「臨床婦人科産科」8月号の記事から、胎児・新生児・乳児期におけるアレルギー予防対策についてご紹介致します。

 

 

妊娠中・授乳中の食事制限では児のアレルギー発症は予防できない

アメリカでの研究ですが、母体の食事制限を行った試験では、児のアトピー性皮膚炎および気管支喘息発症に対する効果は認められませんでした。むしろ、食物除去は母体と児に対して有害な栄養障害をきたす恐れがあります。

一方で、妊娠中にアレルギーの原因となりうる蛋白を積極的に摂取することが児のアレルギーを予防できる、といった報告もありません。

つまり、栄養学的に極端にならず、バランスの取れた食事を妊娠中、授乳中も意識して摂取することが大切であると考えられます。

 

 

離乳食は生後5~6ヶ月から

昔は、アレルギーの原因となりうる食品の摂取を遅らせることがアレルギーの予防になると考えられていた時代もあったようです。
最近のある研究によると、生後6ヶ月からごく少量の加熱鶏卵を段階的に導入した群において、12ヶ月まで鶏卵を除去した群と比較し、有意に鶏卵アレルギーの発症を減少させることができたそうです。

ただし、アレルギーになりやすい乳児に生卵を摂取させることで、重篤なアレルギー反応が誘発されたとする報告もあるため、早期に生卵を大量に摂取することは、もちろん勧められません。

それでも、離乳食の開始を遅らせる必要はなく、生後5~6ヶ月に開始することが望ましいといえます。

 

 

母体の食事習慣と児のアレルギー

ある研究によると、母体が積極的に果物・野菜・魚・ビタミンDが豊富な食品などを摂取すると児のアレルギー発症率は低下するとのことです。

一方、植物油・マーガリン・ナッツ・ファストフードの積極的な摂取は児のアレルギー発症率増加に関連していたそうです。

 

 

食物は単なるアレルギーの原因ではなく、様々な免疫機能を調製する働きがあります。
したがって、児のアレルギー発症予防を気にするあまり、母児ともに極端な食生活を送ることは避け、バランスの取れた食事を適切な量、適切な時期に摂取することが大切であると思われます。