院長コラム

お腹の冷え・腹部膨満感には大建中湯

猛暑が続くこの季節、冷たいものの飲食が増えるため、お腹を冷やし腸管の動きが悪くなる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方にお勧めなのが、漢方薬「大建中湯」です。

 

 

大建中湯の使用目標

体力が低下した方で四肢や腹部が冷え、腹痛、腹部膨満、鼓腸のある場合に用います。

具体的には、腹壁がうすく軟弱無力で、腸蠕動に不安を認める場合や、冷えにより症状が悪化する場合、また開腹術後の腸管通過障害に伴う腹痛・腹部膨満感が大建中湯適応になります。

 

 

大建中湯の薬理作用

(1) 消化管運動促進作用・

ホルモンや神経を介して、腸管平滑筋の収縮を促し腸管運動を改善する働きがあります。

腹部手術後の腸管麻痺、腸管癒着症などによりガスが貯留し、腹部が膨満している場合、腸管を動かして症状を改善させます。

 

(2) 消化管過剰運動抑制作用

腸蠕動が亢進し過ぎて、かえって腹部にガスが溜まり、腹痛をきたすことがあります。

大建中湯は消化管の過剰な運動を抑制する作用もあるため、腹痛などの症状を改善します。

 

   
(3) 腸管血流増加作用

大建中湯は強力な血管拡張物質の放出に関与しており、腸管の血管を拡張することで、血流を改善する働きがあります。

ただし、血流改善により腹部が温まるといった良い効果が期待できる半面、更年期の方の中には、ホットフラッシュが悪化したとの報告もあります。

 

(4) 抗炎症作用

術後の使用により炎症を抑制する効果が知られています。また、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患に対する効果も報告されています。

 

 

婦人科領域での使用

婦人科疾患による開腹術直後の腸閉塞の予防・治療目的で用いることが多いです。また、手術既往のある方で、腹部膨満を訴える方にも腸管運動の改善を期待して処方することがあります。

開腹手術以外でも、子宮内膜症や骨盤内感染症の既往がある方は腹腔内癒着の可能性があります。そのような方の腹部膨満に対しても有効かもしれません。

 

 

腹部膨満感を伴う便秘に対して、大腸刺激性下剤を用いると下腹部痛をきたすことも少なくありません。大建中湯は腸管運動を適切に整えることで腹部膨満感や腹痛を改善させる薬剤ですので、便秘の方に対しても積極的に活用したいと考えています。