院長コラム

眼精疲労に対する補中益気湯

最近のリモートワークの増加、スマホの日常生活への浸透により、眼精疲労を訴える方が増加していると言われています。
眼精疲労とは、目の疲れ以外にも、視力低下や肩こりなどの症状を認め、目を休養しても疲労が軽減しない状態を指すようです。
通常、眼精疲労に対してはコンタクトレンズやメガネの矯正、目を休めるような生活指導や点眼薬で対応するそうですが、この度「補中益気湯(ホチュウエッキトウ)が奏功した症例報告」を目にしました。
今回は、「phil漢方 No.100」に掲載されていた眼科の先生の記事を参考に、眼精疲労に対する補中益気湯について情報共有したいと思います。

・眼精疲労の症状
視作業を続けることで眼部の痛み、頭痛、肩こりなどが認められ、休息によっても回復しない病的疲労が眼精疲労の特徴のようです。
目のピントを調節する筋肉の調節異常が関与しており、治療としてシアノコバラミン点眼液という点眼薬が使用されることが多いとのことです。
ただし、点眼薬だけでは改善できない方も一定数いらっしゃるそうで、虚弱体質な眼精疲労に対して、漢方薬の補中益気湯を併用することで改善された症例が報告されていました。

補中益気湯の効用・効能
補中益気湯は、倦怠感、食欲不振、夏やせなどに用いることが多く、筋緊張緩和作用や鎮痛作用も報告されています。
婦人科的には、疲労感の方だけでなく、多汗症や子宮下垂の方にも用いることがあり、比較的馴染み深い漢方薬の一つです。特に当院では、更年期障害として疲労感、発汗、肩こりなどを認める方には夏場を中心に、ホルモン剤や他の漢方薬に併用することも少なくありません。
ただし、これまで眼精疲労に対しての補中益気湯の処方は、私自身あまりしていませんでした。
これからは更年期障害を訴える方に対して、眼精疲労についてもしっかり問診し、補中益気湯を治療薬の選択の一つとして検討していきたいと考えています。

とはいえ、眼精疲労を自覚された方はまず眼科を受診し、専門的な診察を受けることが必要です。
一方で、当院でも使用している「更年期障害問診票」には「目の疲れ」という項目があることから、眼精疲労は更年期障害の一症状ととらえることもできます。

もし、眼精疲労以外の更年期障害もみられる場合には、眼科だけでなく婦人科も受診し、補中益気湯についてご相談されてもいいかも知れません。