院長コラム

男性のHPVワクチン接種の意義

性交経験前の女性にHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンを接種することが子宮頚がんや尖圭コンジローマの予防に繋がることは、広く知られるようになりました。
ただし、男性とってもHPVワクチン接種が有用であることは、あまり知られていません。
今回は、「日本医師会雑誌2023年3月号」などを参考に、男性にHPVワクチンを接種する事の意義ついて、情報共有したいと思います。

直接的な意義:肛門がん・中咽頭がん・陰茎がんなどの予防

発がん性の高いハイリスクHPVは子宮頚がんだけでなく、肛門がん、中咽頭がん、陰茎がんなどの原因になることも分かってきました。
異性間の性交だけでなく、男性同士の性交でもHPVは感染します。性交のスタイルによっては肛門や喉にハイリスクHPVが感染し、排除されずに感染状態が長期にわたり持続することになれば、肛門がん、中咽頭がん、陰茎がんなどに進展する可能性があります。
したがって、これらのがん予防には、特に性交経験前にHPVワクチンを接種することが非常に有用です。
現在日本では、4価ワクチン「ガーダシル」のみ、9歳以上の男子にも適応が通っていますが、残念ながら2023年11月時点では、男子は定期接種の対象外であるため自費診療になります。
尚、都内では中野区が、小学校6年生から高校1年生相当の男子に対して予防接種費用助成を始めたそうです。中野区民で該当年齢の息子さんをお持ちの親御さんは、是非ご検討下さい。

間接的な意義:集団免疫効果アップによる女性のHPV感染減少

男性のHPVワクチン接種が広がれば、男性から女性へのHPV感染の可能性が減少します。つまり、男女ともにワクチンを接種すると、集団としての免疫効果が高まり、結果的に女性の子宮頚がん・尖圭コンジローマの発症率が低下します。
ちなみに、産道に尖圭コンジローマが存在している状態で経腟分娩すると、赤ちゃんの喉にHPVウイルスが感染し、将来喉にイボが多発するといった重篤な病気になってしまう可能性があります。
次世代のためにも、集団免疫アップは大変重要です。

海外の多くの国では、男女ともにHPVワクチンは定期接種となっていますが、我が国では男子の定期接種についての検討が20228月に始まったばかりです。
できるだけ早く、HPV関連疾患予防に関して「男女平等」となることが期待されています。
尚、自費でも息子さんに接種を希望される方は、是非かかりつけの小児科医にご相談下さい。