院長コラム

漢方薬も副作用に注意が必要

漢方薬は比較的副作用が少ない印象がありますが、どのような薬にも必ず副作用は存在します。
特に中高年の方で、長期服用している場合は、漢方薬といえども注意が必要です。
今回は、「ツムラ医療用漢方製剤・副作用一覧」を参考に、婦人科疾患、特に更年期障害などに対して長期服用することが多い漢方薬の副作用について説明します。

 

漢方薬の代表的な副作用

  • 偽アルドステロン症(低カリウム血症)

血中のカリウムが低下し、ナトリウム・体液が体に貯留する状態です。尿量の減少、顔や手足のむくみ、手のこわばり、血圧上昇、体重増加などの症状をきたします。
また、低カリウム血症が進むと、脱力感、筋力低下、筋肉痛、四肢痙攣・麻痺など、筋肉の異常がみられることもあります。

  • 肝機能障害・黄疸

漢方薬は肝臓で代謝されるため、肝臓に負担がかかり、筋機能障害や黄疸をきたす可能性があります。
倦怠感、皮膚や白目が黄色くなるといった症状があれば、肝機能を検査する必要があります。

  • 消化器症状

漢方薬の副作用として、便秘、食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、腹痛、下痢、軟便、口中不快感、腹部膨満感、口渇、消化不良など、消化器症状が見られることがあります。
また、漢方薬によっては、5年以上の長期服用により「腸間膜静脈硬化症」という大腸の病気をきたす可能性があります。繰り返す腹痛・便秘・下痢・腹部膨満感や、血便が見られた場合は、服薬を中止し、消化器科にて大腸内視鏡などの検査を行うことが必要です。

 

更年期障害に用いる代表的な漢方薬の副作用

  • 当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)

日常診療では、副作用が現れる頻度は少ない印象がありますが、肝機能障害、消化器症状をきたすことがあります。
比較的体力の低下した方に用いる漢方薬ですが、著しく胃腸が弱い方では消化器症状が見られやすいため、特に注意が必要です。

  • 加味逍遥散(カミショウヨウサン)

比較的虚弱の方に用いる漢方ですが、著しく胃腸が弱い方では消化器症状が見られることがあります。
また、重篤な副作用として、偽アルドステロン症(低カリウム血症)、腸間膜静脈硬化症があります。長期服用の方で尿量減少、浮腫、繰り返す下痢・便秘などの症状が見られた場合は、服薬を中止して内科専門医を受診しましょう。

  • 桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)

桂枝茯苓丸は前2種類と比べて、体力が中等度以上の方に用いる漢方薬です。
そのため、体力が衰えている方には肝機能障害や消化器症状などの副作用が現れやすく、その症状が増強されることがあります。

 

服薬上の注意

長期にわたり服用している方は、少なくとも年一回の健康診断で血圧測定、肝機能・腎機能などの血液検査、胸部X線検査、便潜血検査などを行って下さい。
特に、加味逍遥散を5年以上服用している方は、一度大腸内視鏡検査をされることをお勧めします。

 

漢方薬は非常に有用な薬剤です。
必要以上に副作用を恐れることはありませんが、服薬により体調不良をきたしたら、一旦服薬を中断し、かかりつけ医にご相談下さい。