院長コラム

妊娠中の運動・スポーツについて

妊娠経過が順調な妊婦さんにとりまして、適度に運動・スポーツすることは健康維持・増進に非常に有用です。
十分な確証はないものの、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開分娩などを減少させる可能性も指摘されています。
今回は、「産婦人科診療ガイドライン産科編2020」(日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会編)を参考に、妊娠中の運動・スポーツについて説明します。

 

好ましいスポーツと強度

妊娠中に行う運動・スポーツは有酸素運動が望ましく、ウォーキング・ヨガ(ホットヨガは勧めず)・エアロビクス・水泳・固定自転車・ピラティスなどが推奨されています。
運動強度は過度にならず、運動中に無理なく会話ができる状態を保つことが望ましいといわれています。
カナダのガイドラインでは、妊娠中の適切な心拍数の範囲として、20~29歳:135~150回/分、30~39歳:130~145回/分、40歳以上:125~140回/分が勧められています。
また、アメリカやイギリスのガイドラインでは、1日あたり30分程度の中等度の運動をほぼ毎日行うことを勧めています。
ただし、有酸素運動であったとしても、長時間の仰臥位あるいは動かずに立ち続けるような姿勢は好ましくありません。
また、サッカー・バスケットボール・スキー(雪・水上)・スキューバダイビングなど、転倒や落下、接触などの危険を伴うスポーツは避けましょう。

 

妊娠中の運動の禁忌

妊娠中に新しく運動・スポーツに取り組む前には、必ず産科主治医の許可を得るようにして下さい。
もし、重篤な心疾患・呼吸器疾患・頚管無力症・持続する性器出血・前置胎盤・低置胎盤・前期破水・切迫流早産・妊娠高血圧症候群などの疾患・症状がある場合は、運動の種類にかかわらず、妊娠中の運動・スポーツは避けるようにしましょう。

 

運動中に注意が必要な症状

立ちくらみ・頭痛・胸痛・呼吸困難・筋肉疲労・ふくらはぎの痛みや腫れ、腹部膨満や下腹部重圧感・子宮収縮・性器出血・胎動減少や消失・羊水流出感などがみられたら直ちに運動を中止しましょう。
症状が強い場合や改善しない場合など、必要な時は主治医の先生に是非ご相談下さい。

 

当院では妊娠16週以降の妊婦さんにマタニティヨガを推奨しています。
当院のケースでは、一生懸命ヨガに取り組んでいらっしゃる妊婦さんは、そうでない方と比べて、安産になりやすい印象があります。
現在、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、実際に集まって行うことはできませんが、動画配信をしていますので、ご都合のいい時間に是非ご利用下さい。