院長コラム

“消退出血”する主なパターン

女性ホルモンの影響によってみられる子宮出血は、大きくj「消退出血」と「破綻出血」とに分類されます。
卵胞から分泌されるエストロゲンには、子宮内膜を厚くさせる作用があり、排卵後の黄体から分泌されるプロゲステロンには、子宮内膜の増殖を抑えて妊娠に適した状態に変化させる作用があります。
これらの女性ホルモンが、比較的多い状態から急激に減少し、ある一定のレベル以下にまで低下すると、子宮内膜が剥がれて出血をきたします。
このように、エストロゲンやプロゲステロンが “消退”することによる子宮“出血”のことを「消退出血」といいます。
今回は、消退出血をきたす主なパターンについてお話します。

生理的な月経が代表格
通常、7日間ほどの月経期が終わると、エストロゲン分泌量が増加し子宮内膜を厚くさせます。月経開始14日目頃に排卵すると、排卵した卵胞が黄体という組織に変わりプロゲステロンを分泌します。
プロゲステロンは約2週間かけて子宮内膜を妊娠に適した状態に整えますが、受精卵が子宮内膜に着床しない(つまり妊娠しない)と、エストロゲン、プロゲステロンともに減少し、子宮が剥がれて消退出血を起こします。
これが、排卵性月経、つまり通常の月経のことであり、妊娠しなければ約一か月の周期でみられます。

無排卵でも消退出血することが
子宮内膜は、プロゲステロンが存在しなくても、エストロゲン濃度の急激な減少だけで剥がれてしまう事があります。
卵子が入っている卵胞が大きく成熟し、弾けて卵子が飛び出る現象が排卵ですが、何らかの理由で大きくなった卵胞が排卵せず、そのまましぼんでしまう事があります。
それに伴い、これまで卵胞から分泌されていたエストロゲンが減少してしまうため、子宮内膜が、妊娠には適していない状態のまま、剥がれ落ちてしまうことになります。
このようなエストロゲンのみの消退出血を無排卵性月経と言います。
ちなみに、ご自身の月経が「排卵性」か「無排卵性」かをはっきりさせるには、基礎体温を数か月つけて頂くのがいいでしょう。
尚、排卵期にエストロゲン濃度が一過性に低下し、子宮内膜が微妙に剥がれ、微量出血を数日間認める事があります。この消退出血は排卵期出血(中間期出血)といい、生理的な出血でありますので心配はいりません。

避妊目的に使用する経口避妊薬や、月経困難症治療薬であるLEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬)を服用している場合、周期的に休薬するか、偽薬(プラセボ)を服用することで出血させることがありますが、これも消退出血です。
また、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)など、エストロゲン分泌量は十分であるものの、排卵障害のために無月経となった場合、黄体ホルモン製剤を用いて人工的に出血をさせる治療法がありますが、その出血も消退出血と言えます。
以上のように、生理現象、病気の症状、治療の影響など、消退出血には様々なパターンがありますが、「女性ホルモンが急に減り、子宮内膜が剥がれて出血する」といったイメージがご理解しやすいかも知れません。