院長コラム

妊娠中の子宮頚がん検査で異常細胞が見つかった方へ

子宮頚がん患者さんの約3%は妊娠中に発見され、妊娠中の細胞診異常の頻度は約1.4%といわれています。
そのため、一定期間子宮頚がん検査を行っていない妊婦さんには、妊娠初期に子宮頚部細胞診を行う必要があります。
今回は、妊娠中に子宮頚部細胞診で異常が認められた場合の対応について説明します。

 

 

子宮頚部細胞診の時期

当院では、原則として全妊婦さんに対し、妊娠9週前後に子宮頚部細胞診を行っています。東京都の母子手帳をお持ちの方は無料券を利用しますが、他の地域の方で「子宮腟部びらん」が認められた場合は、細胞診を保険診療で行っています。

尚、最近(約6ヶ月以内)子宮頚部細胞診を行っており、その結果がNILM(陰性:異常なし)であった場合は省略することもあります。

 

 

細胞診の結果がASC-US(軽度扁平上皮内病変疑い)だった場合

ヒトパピローマウイルス(HPV)感染が疑われます。HPVには発がん性が高いハイリスクタイプと発がん性が低いローリスクタイプがありますので、まずはハイリスクHPVの有無を検査します。

ハイリスクHPV検査が陰性であった場合は、通常通り当院で周産期管理を行い、6ヶ月後または分娩後に細胞診を行います。

もし、陽性であった場合はコルポスコピー(拡大鏡による観察)および病変部の組織診を行い、軽度異形成~中等度異形成であれば、原則として3ヵ月毎の細胞診で当院にて結果観察します。

 

 

細胞診でLSIL(軽度扁平上皮内病変)、HSIL(高度扁平上皮内病変)、ASC-H(高度扁平上皮内病変疑い)の場合

コルポスコピーおよび組織診を行い、軽度異形成~中等度異形成であれば、原則として3ヵ月毎の細胞診を当院にて行いますが、高度異形成以上の強い病変が認められた場合は、東京医療センター、成育医療研究センターなどの高次施設へ紹介致します。

 

 

細胞診でHSIL(高度異形成・上皮内がん)、SCC(扁平上皮がん)、腺細胞異常の場合

速やかに高次施設へ紹介します。
ちなみに、コルポスコピーおよび組織診微小浸潤癌、上皮内がん、上皮内腺がんの場合、子宮頚部の円錐切除術を行うことがあります。手術は妊娠14~15週前後に行われることが望ましいため、紹介先の施設には可能な限り早めの受診をお願いします。

 

 

妊娠中の子宮頚部異形成は進展する可能性は低く、分娩後に消退するという報告もあります。したがって、妊娠初期の検査で初めて軽度~中等度異形成と診断された方はもちろん、妊娠前から軽度~中等度異形成で経過観察されていた方も、ほとんどの場合で通常通りの分娩が可能です。必要以上に心配されなくても大丈夫です。
ただし、分娩後も定期的に細胞診・組織診は受けるようにしましょう。