院長コラム

母乳育児のメリット~母乳でリスクが下がる赤ちゃんの疾患~

母乳には栄養学的、感染防御的に、人工乳にはない利点があるため、母体の心身の健康状態が許せば、世界的に母乳育児が推奨されています。
当院でも、妊娠中から乳房ケアには力を入れており、産後には当院分娩でない方も含め、数多くの授乳婦さんを母乳外来で対応しています。
今回「臨床精神薬理 2019年2月号」などを参考に、母乳育児のメリット、特に母乳でリスクが下がる(対人工乳)赤ちゃんの疾患について情報共有致します。

・中耳炎:母乳機関が3か月以上の場合、約50%リスクが低下するとの報告があります。母乳期間を問わない調査でも、25%近く低下するとのことです。
・上・下気道感染症:4か月あるいは6か月以上の母乳期間で、60~70%リスクが低下するそうです。
・RSウイルス気管支炎:4か月以上の母乳期間では、リスクが1/4にまで低下するそうです。
・感染性胃腸炎:母乳期間は問わず、6割以上リスクが低下するようです。
・アトピー性皮膚炎:3か月以上の母乳期間では、アトピー家族歴がない場合は40%以上、アトピー家族歴があった場合でも30%近くリスクが低下します。
・喘息:3か月以上の母乳期間では、アトピー家族歴がある場合は40%、アトピー家族歴がない場合は25%近くリスクが低下するそうです。
・肥満:母乳期間を問わず、1/4程度リスクを下げます。
・糖尿病:1型の場合、3か月以上の母乳期間で3割、2型の場合は、母乳期間を問わず、4割リスクが低下するとの報告があります。
・乳幼児突然死症候群:1か月以上の母乳期間で35%以上リスクが低下するそうです。

母乳育児の母体に対するメリットとして、メタボリックシンドローム、2型尿病、高血圧、心臓病などの発症を低下させることが知られています。
ただし、乳児ビタミンK欠乏性出血のほとんどが母乳栄養児であること、成人型T細胞性白血病ウイルスが母乳を介して母子感染すること、母体の心身の状態によっては無理な母乳育児が害を及ぼす場合があることなど、注意も必要です。
当院では、母乳育児を推奨しつつも固執せず、母児の状況に合わせたケアを心がけて参ります。