院長コラム

歯周病と妊娠前ヘルスケア

妊娠前のヘルスケア・健康管理をプレコンセプションといい、近年日本でもその重要性が叫ばれています。
一方、口腔内感染症である歯周病は、早産や低出生体重児といった妊娠期トラブルの要因になる事が知られているため、妊娠中の歯科検診が推奨されています。
しかし、プレコンセプションとしての歯周病の研究は、これまであまりされてこなかったようです。
今回、「プレコンセプションケア」(メジカルビュー社)の内容を参考に、歯周病とプレコンセプションについて、情報共有したいと思います。

10代から歯周病に注意!
ある報告によると、女性における4㎜以上の歯周ポケットをもつ割合は、15∼29歳で約20%、40歳前後では30%を超えるそうです。
また、歯肉出血の割合は、10代で30~40%、25~34歳では45%を超えるとの報告もあるそうです。
つまり、10代から歯周病のリスクが高まり、妊娠を考える時期にはすっかり歯周病になってしまっている方も少なくないと思われます。

歯周病の悪玉菌は女性ホルモンがエサ
歯周病の原因となる悪玉菌の中には、女性ホルモンを栄養源として増殖するタイプがあるそうです。女性ホルモンが増加する妊娠中に急増し、8割以上の妊婦さんの唾液からこのタイプの悪玉菌が検出されたとの報告もあり、妊娠期の歯科検診は非常に重要です。
実は、月経周期によっても女性ホルモンの分泌が変動し、女性ホルモンが増加する時期(排卵から次回月経の間など)に悪玉菌が増加し歯肉炎が悪化することがあるそうです(月経周期関連歯肉炎)。
是非、歯科を受診し、月経周期に合わせた口腔ケアについて教えて頂くのがいいでしょう。

歯周病の女性は妊娠しづらくなるかも
海外でのある報告によると、歯周ポケットがある女性は、ない女性よりも妊娠に要した期間が長くなったそうです。
また、妊娠された方より、妊娠されなかった方の方が、唾液中の歯周病悪玉菌が多かったとの報告もあるそうです。
このように、歯周病は不妊リスク因子の一つとも考えられているようです。

女性ホルモンの分泌が急増する思春期女性は、自覚症状がなかったとしても定期的に歯科検診を受けることがいいかも知れません。
また、妊娠を考えている方は、ブライダルチェックの一環として積極的に歯科を受診しましょう。
プレコンセプションの点でも、虫歯や歯周病の予防・早期発見・早期治療は重要ですので、かかりつけ歯科クリニックを持たれることをお勧めします。