院長コラム

月経の意味

月経痛や過多月経など、月経関連のトラブルに悩む女性は少なくありません。
それなのに、なぜ月経が存在するのでしょうか?
今回「みえる!わかる!女性内分泌」(メジカルビュー社)を参考に、月経の意味について考えてみました。

月経とは

受精卵が子宮内膜の“ふかふかベッド”に包まれることを「着床」といい、「妊娠が成立した」と考えます。
もし、受精卵が着床しなければ(妊娠が成立しなければ)“ふかふかベッド”を“子宮の部屋”に置いておく意味はなく、むしろいらなくなった“ベッド”を“部屋”の外に運び出さないといけません。
このように、子宮内膜が剥がれて、体の外に排出される現象を月経といい、妊娠が成立するまで繰り返すことになります。
尚、内膜が剥がれるきっかけは、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の急激な減少です。

妊娠から出産までの過酷な道のり

ヒトが誕生することは、奇跡であり、素晴らしい事である一方、過酷であり、きれいごとではない側面もあるように思います。
ヒトの妊娠率は哺乳類の中で最も低く、月経周期ごとの妊娠率は約20%といわれています。
ヒトは進化の過程で2足歩行となり、妊娠した場合は重力に逆らって、子宮内に胎児を保持する必要が出てきました。
また、ヒトは大脳を発達させたため頭が大きくなり、難産になることが運命づけられてしまいました。
その結果、妊娠から出産までの過酷な道のりに対応できる胚(赤ちゃんの元)を取捨選択する必要が出てきました。

月経の意味

一般的に胚の約30%が着床前に喪失し、約30%が着床直後に淘汰され、妊娠後10~20%が初期流産となります。
特に、着床前の段階で、過酷な運命に耐えうる胚かどうかを選別するシステムがヒトには存在しており、耐えられないと判定された胚については、あえて着床させないようにコントロールされています。
そして、「今回の月経周期では、過酷な運命を耐えうる胚がなかったため、子宮内膜をリセットする」と判断されて、子宮内膜が剥がされること(月経)になります。
つまり、月経とは、ヒトが進化したための必然的な“結果”とも考えられます。

胚は、着床まで辿り着いた段階で「スターの卵」です。
月経は、毎月の“胚のオーディション”で合格者が出なかった場合の“オーディション会場の後片付け”ともいえます。
逆に言えば、月経トラブルを抱えている女性にとって、毎月やる必要のない“辛い後片付け”を「いかにしないで済ませられるか」が、治療上重要になります