院長コラム

更年期女性とメタボリックシンドローム

メタボリックシンドローム(以下メタボ)とは、内臓脂肪型肥満を基に、糖代謝異常・脂質代謝異常・高血圧を複数合併する症候群で、動脈硬化になりやすい病態をいいます。
今回は、更年期とメタボについて、「女性医学ガイドブック」更年期医療編(2019年度版)を参考に説明します。

 

日本の女性のメタボ診断基準

<必須項目>

ウエスト周囲径:90cm以上(内臓脂肪面積100cm²に相当)

<上記+以下のうち2項目以上>

  • 高い中性脂肪(高TG血症):150㎎/dl以上
      かつ/または
    低HDL(善玉)コレステロール血症:40㎎/dl未満
  • 高血圧 収縮期血圧:130mmHg 以上
      かつ/または
        拡張期血圧:85mmHg 以上 
  • 空腹時高血糖:110㎎/dl以上

 

内臓脂肪が増える要因

内臓脂肪が増える原因として、加齢、運動量の低下、筋肉量の低下、エネルギー摂取量>消費量、エストロゲン(女性ホルモン)の低下、男性ホルモンの相対的高値、飲酒、喫煙、ストレスなど様々な要因が挙げられます。
更年期女性の場合、加齢・エストロゲンの低下・男性ホルモンの相対的高値は避けることはできない上に、運動不足やエネルギーの過剰摂取の傾向があるため、メタボになりやすいといわれています。

 

中高年女性のメタボ予防

  • 運動習慣を身に付ける
    運動により皮下脂肪よりも内臓脂肪が減少しやすいので、メタボの予防には有用です。
    また、運動療法は体重増減にかかわりなく、糖脂肪代謝を改善する働きもあります。

  • 食生活や生活習慣を適正にする
    摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスを考えることは大切であり、糖分や脂肪分の高い食事は控えましょう。
    ただし、筋肉量を低下させないように、極端なダイエットは行わず、蛋白質は適切に摂取することをお勧めします。
    尚、ゆっくり食事し、飲酒を控え、禁煙することも有用です。

  • ホルモン補充療法(HRT)の検討も
    閉経に伴うエストロゲンの減少により、血糖を抑えるインスリンの働きが低下する可能性があります。HRTは、低下したインスリンの働きを改善し、内臓脂肪を減少させることが知られています。
    ただし、HRTの効果は運動習慣や食生活改善程の効果はなく、メタボ予防の目的のみでHRTを行うことは勧められません。
    更年期障害や骨粗しょう症の治療でHRTを検討している方は、メタボ予防という副効用を考慮してもいいでしょう。

 

メタボは年齢と共に増加します。
日本でメタボが疑われる女性は全体で約10%ですが、50代以降に急増し、60代で約12%、70代で約18%との報告があります。
できれば、更年期の時期からは生活習慣の改善を心掛け、定期的に健康診断を受けるようにしましょう。