院長コラム

新成人の皆様へ~子宮頚がん検診のすすめ~

新成人の皆様、おめでとうございます。2020年の新成人は全国で約122万人、その内女性は約59万人との事です。
今回は20歳を迎えた方々へ、子宮頚がん検診について説明致します。

 

 

子宮頚がんとは?

子宮頚がんとは、子宮の入り口部分(子宮頚部)に発生するがんのことで、20~30歳代の若い女性に多く、毎年1万人の女性が子宮頚がんとなり、約3,000人の方が亡くなっています。
子宮頚がんの原因として、発がん性の高いヒトパピローマウイルス(ハイリスクHPV)というウイルスの感染であることが知られています。ハイリスクHPVは性的接触で感染しますが、感染者の約90%は自身の免疫力で自然にウイルスを排除します。しかし、約10%の方はハイリスクHPV感染が長期間持続してしまい、前がん病変である軽度異形成、中等度異形成、高度異形成へと進展し、放置すると上皮内がん、浸潤がんへと悪化することがあります。

 

 

子宮頚がんの予防法(1次予防):HPVワクチン

ハイリスクHPVの中でも、特に発がん性が高い16型・18型のタイプについては予防可能なワクチン2種類(サーバリックス、ガーダシル)が2009年に承認され、2013年4月より定期接種となっています。世田谷区では、小学校6年生相当年齢~高校1年生相当の女子が助成の対象となっていますので、新成人の方の中には接種済みの方も多いかも知れません。ただし、HPVワクチンで予防できるのは約60~70%とも言われており、前がん病変の段階で発見するためには、定期的な子宮頚がん検査を受けることが必要です。
もちろん、今までHPVワクチンを接種したことがない方は、性交経験の有無に関わらず、HPVワクチンであるサーバリックスまたはガーダシルを6か月で3回接種するようにしましょう(自費診療)。尚、HPVワクチンの副作用・副反応については、接種前に担当医から伺って下さい。

 

 

子宮頚がんの予防法(2次予防):子宮頚がん検診

性交の経験がある方の場合、2年に1回は子宮頚がん検診を受けることが勧められています。世田谷区に住民票がある方は、20歳から40歳まで毎年子宮頚がん検診受診票を請求することが可能で、ご持参頂くと800円の自己負担で検査が受けられます。また、受診票がなくても、婦人科診察にて子宮頚部の肌荒れ(子宮腟部びらん)がみられた場合は、保険診療で子宮頚がん検査が可能です。

検査方法は、内診台に上がって頂き、腟鏡を腟内に挿入し、腟壁を広げます。その後、子宮頚部を小さなブラシで擦って細胞を採取し、スライドグラスに塗り付けます(細胞診)。腟鏡で腟壁を広げる際にやや痛みを感じることや、細胞採取後少量の出血を認めることがありますが、ほとんどが一時的なもので、大きなトラブルにはなりません。当院では検査から1~2週間後、直接ご本人に検査結果をお伝えします。

検査結果が「異常なし」であれば、1~2年後のがん検診をお勧めします。「精査を要す」となった場合は、異常所見の種類よってその後の方針が変わります。当院では、軽度病変疑いの方にはハイリスクHPVの有無を調べる検査を行い、軽度から中等度異形成が疑われる方には拡大鏡で観察し、1~数ヶ所組織を採取します(組織診)。もし、高度異形成以上の病変が疑われた場合は、婦人科腫瘍の診療経験が豊富な高次施設(東京医療センター、東邦大学医療センター大橋病院、厚生中央病院など)へ紹介致します。

 

 

HPVワクチンを接種し、子宮頚がん検診を受けて頂ければ、子宮頚がんにかかる率、子宮頚がんでの死亡率ともに下げることができます。
性交の経験がある2 0歳以上の方は、健康管理の一環として、また「かかりつけの産婦人科医」を見つけるきっかけとして、少なくとも2年に1回子宮がん検診を受けて頂くことをお勧めします。