院長コラム

新型コロナで「不安な時代」に“加味帰脾湯”

新型コロナウイルス感染の第6波の中、精神的に不安となり、疲労感や不眠に悩まされている方は少なくありません。
そのような症状に対して、漢方薬は非常に有用です、当院では特に最近、“加味帰脾湯(カミキヒトウ)”を処方することが増えてきました。
今回は、「女性診療で使えるヌーベル漢方処方ノート」などを参考に、加味帰脾湯について情報共有したいと思います。

 

加味帰脾湯の効能・効果

虚弱体質で血色が悪い方の、貧血・不眠症・精神不安・神経症が、加味帰脾湯の効能・効果とされています。
また、寝汗、全身倦怠感、食欲不振などを伴う方にも有用とのことです。

 

不安症状や抑うつ症状に効果的

ある研究によると、1日7.5gを1日3回毎食前に8週間服用したところ、不安神経症が約65%、抑うつ神経症は約57%の改善率が認められたとのことです。
加味帰脾湯は抗不安作用と精神安定作用が強いため、当院では不安症状や抑うつ症状に悩まされている方に対し、第一選択としてこの薬剤を処方することが少なくありません。

 

“元気”を補う作用にも期待

全身倦怠感が強い方を元気にさせる漢方薬を「補剤」といいます。
加味帰脾湯は補剤の一つで、構成している生薬は、代表的な補剤である「補中益気湯」とかなり共通しています。
疲労感が強く、不安感・抑うつなどの精神症状がある方に、特にお勧めです。

 

貧血・不眠に対する効果

加味帰脾湯は“元気”だけでなく、“血”も補う作用があります。ある報告によると、服用4週間で貧血の重症度が改善したそうです。
また、不眠症に対する効果も認められ、ある研究では服用期間に応じて不眠症の重症度も軽快していったようです。

 

ほてりや高ぶりを抑える作用も

加味帰脾湯に含まれている山梔子(さんしし)という生薬には、ほてりや高ぶりを抑える作用があります。
更年期障害、あるいは偽閉経療法の副作用として、ほてりなどが強くあらわれた場合は、加味帰脾湯が有効なケースがあるかもしれません。

 

精神症状や不眠が強い場合、西洋薬である抗不安薬や抗うつ薬、睡眠薬の服用が一般的かも知れません。
ただし、西洋薬の効果が今一つである方や、向精神薬の副作用がご心配な方もいらっしゃるでしょう。
そのような方は、加味帰脾湯などの漢方薬を是非ご検討下さい。