院長コラム

中高年女性の尿漏れとその対策

2月20日は「尿もれ克服の日」、だそうです。
現在、40歳以上の女性の40%以上が尿漏れの経験があるといわれていますが、医療機関へ受診しないで一人悩まれている方が多いようです。
今回は、「女性医学ガイドブック更年期医療編 2019年度版」などを参考に、中高年女性の尿漏れについて情報を共有したいと思います。

 

腹圧性尿失禁

くしゃみ・咳をした時や、重たい荷物を持ち上げたり、急に走ったりした時など、腹圧がかかると尿が漏れてしまうタイプを「腹圧性尿失禁」といいます。40代以上の女性で、週1回以上腹圧性尿失禁を認める方は、約10%いらっしゃるようです。出産や加齢で、膀胱・子宮・直腸などの臓器を支えている「骨盤底筋」がゆるみ、尿道を閉じる筋肉の力が弱まることが原因で、尿漏れをきたします。また、肥満の女性に多くみられ、子宮筋腫や子宮腺筋症などによる膀胱圧迫が要因となっているケーズもあります。腹圧性尿失禁が頻回にみられる場合は婦人科を受診し、子宮が大きくなっていないか確認されることをお勧めします。

 

切迫性尿失禁

突然強い尿意を感じ、トイレまで我慢できずに尿が漏れてしまうタイプを「切迫性尿失禁」といいます。骨盤底筋のゆるみに加えて、排尿させる時に必要な膀胱の筋肉が過剰に緊張してしまうことが原因です。
このような膀胱を「過活動膀胱」といい、加齢とともに増加します。「日中の排尿の回数」「夜寝てから朝起きるまでの排尿の回数」「急に尿がしたくなり、我慢が難しいこと(尿意切迫感)の頻度」そして「切迫性尿失禁の頻度」をスコア化して、過活動膀胱の重症度を評価します。
ちなみに、閉経後は「腹圧性」と「切迫性」が混在する「混合性尿失禁」が増加します。

 

尿失禁に対する主な対策

特に腹圧性尿失禁の方にお勧めなのが「骨盤底筋訓練」です。ゆるんだ骨盤底筋を鍛えるトレーニングで、切迫性尿失禁の方にも有効です。
方法は、①肛門・腟・尿道口をすぼめるように、10数秒かけて、ゆっくり閉めます。②次にゆっくりゆるめます。③“閉める・ゆるめる”を10回1セット、1日3~5セット行います。
切迫性尿失禁の方に対しては薬物療法が有用ですが、トイレに行きたくなった時に少し我慢する「膀胱訓練」も勧められています。徐々にトイレに行く間隔を延ばすことで、膀胱に尿を貯められる量を増やすようにします。

 

尿失禁予防には、水分の取り過ぎに注意し、体を冷やさないようにすることが大切です。
また、肥満の方の場合は、体重を減らすことも有用です。
それでも尿失禁でお困りの方は、泌尿器科や婦人科を受診してみましょう。