院長コラム

女性のライフステージに応じたお勧め避妊法

避妊法を選択するにあたり、理想的な条件としては、避妊効果が確実・簡単に使える・経費がかからない・副作用がない・女性の意志だけで実行できる・避妊以外の健康上の利点が期待できる、などが挙げられます。
ただし、現実的に全てを満たす完璧な避妊法はなく、ライフステージに応じて最善の避妊を選択することが現実的です。
今回は、「女性医学ガイドブック思春期・性成熟期編2016年度版」を参考に、女性のライフステージに応じたお勧め避妊法をお伝えします。

 

思春期から30代

性的に活発な世代の方には、より確実な避妊法が望まれ、第一選択として経口避妊薬(OC)が推奨されます。OCは原則として、飲み忘れがなければほぼ100%の避妊効果があります。
また、月経困難症で悩まれている方は、自費であるOCと同じ避妊効果がある低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)を治療薬(保険適応)として服薬することができます。
尚、妊娠経験(特に経腟分娩歴)がある方の場合、自費の銅付加子宮内避妊具(銅付加IUD)、あるいは月経困難症・過多月経のある方であれば、保険適応の黄体ホルモン放出型子宮内システム(IUS)もお勧めです。

 

産後・授乳中

OCは避妊効果が大変高いのですが、重篤な副作用として血栓症があります。産後4週間以内の褥婦さんの場合、生理的に血栓症のリスクが高まるため、この時期にOCを服用することはできません。
また、産後1か月以上経過していたとしても、授乳をしている場合はOC服用による乳汁分泌低下などのリスクがあるため、分娩後6か月以内で母乳栄養が主体である方にはお勧めできません。
そのような場合は、IUDやIUSがお勧めです。ただし、出産直後のIUD・IUSの挿入は、子宮内感染や子宮穿孔などを起こす危険性があるため、子宮が妊娠前の状態に回復する約6週間以上待ってから、子宮内に挿入します。

 

産み終え世代(40代後半)

実は、40代の方が予期せず妊娠してしまい、人工妊娠中絶手術を行うケースも少なくありません。
40代に入り、新たにOCを飲み始めると血栓症のリスクが高まることが知られているため、この世代の方にはIUD・IUSが推奨されます。
ちなみに、これらを一度挿入すると、最長5年間は効果を発揮するので、多くても1回の入れ替えで、閉経へ逃げ込むことも可能です。

 

OC、IUD、IUSについては性感染症の予防にはならないため、男性側にはコンドームを使用してもらうことも大切です。
また、避妊に失敗した場合は、性交後72時間以内に緊急避妊薬を服用するか、120時間以内に銅付加IUDを挿入しましょう。