院長コラム

性教育について考える

先日、「これからの性教育~東京産婦人科医会の取り組み~」について、東京都における性教育に関してリーダー的な存在である先生のご講演を拝聴しました。
講演会の内容に私見を交えながら、性教育の必要性についてお話致します。

 

 

予期せぬ妊娠を避けるために

実は全国的に人工妊娠中絶件数は減少しており、10代の中絶件数も減少傾向にあります。それでも、15歳未満の中絶件数は220件であり、出産件数は46件にも及びます。出産したケースのほとんどが、人工中絶可能な週数を過ぎてしまい、妊娠継続せざるを得なかったと考えられます。したがって、中学性から避妊・人工中絶に関しての性教育を行い、生徒たちが正しい性の知識を得ることができれば、予期せぬ妊娠・出産をもっと避けることができるのでは、と思います。

また、予期せぬ妊娠・出産は貧困やパートナーからのDVに繋がり、リストカットや幼児虐待など自他を傷つける行動に移りやすくなります。場合によっては、SNSで知り合った男性と無防備なセックスを行い、再び予期せぬ妊娠を繰り返すことになります。

このような負の連鎖を断ち切るためには、正しい妊娠に関する生物学的知識、法的・社会的知識を持ち、自ら考えて自ら行動することが思春期の学生たち求められます。特に女性は自分の身を守るために、そもそもどのような行為をしたら妊娠する可能性があるのか?男性がコンドームを装着すれば妊娠を完全に防げるのか?腟外射精で避妊できるか?自分はいつ排卵しているのか?セックスした後に避妊する方法はあるのか?妊娠週数はどのように数えるのか?妊娠何週までなら妊娠中絶手術を受けられるのか?男性任せにしない自分で行なえる避妊法はあるのか?などを知る必要があります。そのためには早い時期からの性教育は欠かせません。

 

 

性感染症の知識を広めるために

性感染症は細菌・ウイルスなどの病原体が性行為(セックス・キス・オーラルセックスなど)によって感染します。病原体にしてみたら、自分の命を守り、子孫を繁栄させるために生きるのに必死です。そのため、病原体はたくさんの人に素早く感染するよう“老獪”に行動します。

人間側としては、性感染症から身を守るために、余程慎重に性行為と向き合わないといけません。決してコンドームは性感染症予防に万能ではないが、正しい装着でリスクが減ること、コンドームを装着しないオーラルセックスは“自傷行為”であること、仮に彼は信用できても、彼の元カノあるいは元カレは必ずしも信用できないこと、性感染症によっては一生完治せず、悩まされ続けること、不妊症の原因になる感染症もあることなど、性感染症の正しい知識を得ることが大切です。そして、コンドームを装着しないセックスやオーラルセックスを強要する男性には、きっぱりと拒否する強さを身に付けることが必要です。

ネットでの誤った情報やアダルトサイトの性ビジネス目的の動画を信用しないように啓発する性教育は、1回だけでなく、繰り返し行なうことが必要と思われます。

 

 

東京産婦人科医会の取り組み

東京都は、平成18年度から文部科学省の委託事業として都立高校へ産婦人科医を派遣しており、昨年は5つの中学校でもモデル授業を行なったそうです。東京都産婦人科医会としては周産期メンタルヘルスと並んで中学校・高校での性教育に対して、喫緊の重要課題として力を入れています。更に、指導医の研修や性教育用資料作成など、性教育を教える側のレベル向上にも取り組んでいます。

 

 

当院では、これまで来院される思春期女子に対して、治療上必要なポイントのみを日常診療内でお話してきました。
今後は東京都産婦人科医会の要請を受けるなどして、主に世田谷区内の高校を中心に性教育活動にも力を入れたいと思っています。