院長コラム

閉経後性器尿路症候群に対するモナリザタッチ(腟外陰レーザー治療)

閉経後の性ホルモン分泌低下に関連して生じる性器・尿路の形態的変化と機能障害を総称して、閉経後性器尿路症候群(GSM)といいます。GSMの中でも外陰部乾燥・灼熱感・疼痛・性交痛などに対しては、ホルモン補充療法(HRT)が第一選択となります。
しかし、HRTが禁忌の方や副作用がみられた方、HRTに抵抗がある方、あるいはHRTだけでは外陰腟症状が改善しない方には、腟外陰レーザー治療「モナリザタッチ」をお勧めします。

 

 

エストロゲンの低下に伴う腟外陰部の症状

エストロゲン分泌量が減少すると腟の血流が低下し、腟分泌物も減少するため腟内が乾燥します。また、腟粘膜のコラーゲンが減少し、腟壁のひだがなくなり、薄くぺらぺらになります。更に、腟を雑菌から守る乳酸桿菌が減少し、腟内が酸性からアルカリ性に傾き、自浄作用が弱まります。

その結果、外陰部のかゆみ・異臭や灼熱感、乾燥感、性交痛、腟炎などを引き起こすことになります。また、尿を膀胱にためると痛みや違和感があるため、結果的に頻尿となってしまう「膀胱痛症候群」や尿失禁、反復する膀胱炎など、排尿障害をきたすこともあります。

 

 

モナリザタッチの作用

モナリザタッチは、腟内、腟入口部、大陰唇に炭酸ガスレーザーを照射する治療です。レーザーで皮膚・粘膜の下にある組織に熱反応(軽い日焼け)を起こさせます。その後、組織の再生力が高まり、コラーゲンが増殖し、腟壁のひだが改善し、組織に潤いが戻ってきます。その結果、GSMの多くの症状の改善が期待できます。

ある調査では、治療前と比較した3回治療後の改善率は、陰部灼熱感:84%、かゆみ:85%、乾燥:76%、性交痛:72%、腟ゆるみ:90%、排尿痛69%、尿意切迫69%であったとの事です。

 

 

モナリザタッチの特徴

施術の前に腟入口部と大陰唇には経皮麻酔クリームを使用するため、施術中はほとんど強い痛みは感じません。
実際にレーザーを照射している時間は合計で4-5分程度です。

術直後からの日常生活の制限はありませんが、当日の入浴と3日間も性交は控えて頂きます。また、しばらくは外陰部を強く刺激しないよう心掛けて頂いております。

月に1回、合計3回施術をする事が標準ですが、1回でも2回でも効果を実感される方も少なくありません。

副作用は、施術中の軽い痛みや熱感、初回排尿時の疼痛、数日続く外陰部のヒリヒリ感などがありますが、ほとんどは一過性で軽度な症状で、長期にわたる重篤な副作用はありません。

 

 

他の治療薬との併用

GSMの症状は多岐にわたるため、必ずしもモナリザタッチ単独で、全てが改善するとは限りません。当院では症状に合わせて、他剤と併用することがあります。

〇ホルモン剤

モナリザタッチのみで改善しない萎縮性膣症場合、エストリール腟錠や内服薬を併用することもあります。
また、腟入口部の灼熱感や性交痛が残る場合には、男性ホルモン軟膏「グローミン」を使用することがあります。

〇過活動膀胱治療薬

モナリザタッチ単独で過活動膀胱が改善するケースもありますが、通常「ステーブラ」「ベタニス」といった過活動膀胱治療薬が第一選択です。ただし、両者を併用することで相乗効果は期待できるかもしれません。
尚、腹圧性尿失禁に対してもモナリザタッチで改善することはありますが、骨盤庭筋体操を行わないと難しいようです。

他にも、加齢に伴う性器尿路系の症状には、八味地黄丸、牛車腎気丸などの漢方薬、外陰部症状が強い時にはロコイド軟膏、リンデロンVG軟膏などのステロイド外用剤を用いることがあります。

 

 

モナリザタッチは、決して若返りの治療ではありませんが、GSMに対して非常に有用な治療法であることに、間違いはありません。
GSMの症状にお悩みの方は、まずは一回施術されることをお勧めします。