院長コラム

当院における鉄欠乏性貧血治療剤の使い方

子宮筋腫などによる過多月経や、分娩時の出血が原因で鉄欠乏性貧血をきたす女性は少なくありません。
そのような方に対して、貧血治療剤である鉄剤の内服薬が第一選択になりますが、消化器症状などの副作用のため、内服薬を継続することが困難な場合があります。
今回は、当院における貧血治療について説明します。

内服薬「リオナ錠」が第一選択

鉄剤の内服薬は、嘔気・胃痛などの副作用をきたすことが少なくありません。
その中でも「リオナ錠」は消化器症状が少ないことで知られており、当院では鉄剤治療の第一選択として使用しています。
まずは、1~2週間の処方後、副作用の有無について確認し、強い副作用がなければ継続処方しております。

場合により「インクレミンシロップ」「人参養栄湯」の処方も

もし「リオナ錠」による副作用が強く、継続して服用することが困難な場合は、小児に用いることが多い「インクレミンシロップ」に切り替えることがあります。
その他、貧血に有用な漢方薬「人参養栄湯(ニンジンヨウエイトウ)」を使用することもあります。特に、疲労感、ふらつきを認める方や、分娩後に貧血がみられる方に対して、単独あるいは鉄剤の併用薬として処方しています。

内服薬が困難な場合は「モノヴァー静注」

経口鉄剤の服用が困難な方や、急速に鉄欠乏状態を改善させたい方に対して、当院では「モノヴァー静注」を使用しています。
体重(妊婦さんの場合は妊娠前の体重)が40㎏以上、50㎏未満の場合で、ヘモグロビン濃度(Hb)が10g/dl 未満の場合は週1回500㎎を2回、つまり合計1000㎎を点滴静注(一回あたり約15分)します。
体重が50㎏以上、70㎏未満の方で、Hbが10g/dl以上の場合は1,000㎎を1回で、Hbが10g/dl未満の場合は1500㎎を2回に分けて(1,000㎎と500㎎を週1回ずつ)点滴静注します。

モノヴァー静注の場合、初回投与1~2週間でHbが上昇し、1か月後には貧血が改善することが多いようです。
当院では、分娩時出血が多い産婦さんに使用する場合があります。
もし、子宮筋腫に対する手術を控えている方で、できるだけ早く貧血を改善したい方がいらっしゃいましたら、是非ご相談下さい。