院長コラム

低用量ピル(OC・LEP)のデメリットと対策

避妊のための経口避妊薬(OC),月経困難症の治療目的で使用する低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)の有用性は、広く知られています。
一方で、その有害事象を心配されている方も少なくありません。
今回は、OC・LEPのデメリットとその対策について、「OC・LEPガイドライン2020年度版」などを参考に、情報を共有したいと思います。

服用者の約20%に異常子宮出血

OC・LEPによる有害事象で、最も頻度が高いのが異常子宮出血です。
文献的には約20%とされていますが、個人的にはもっと頻度が高い印象があります。
一般に、服用継続とともに次第に減少するため、まずは3周期服用して頂きます。
ヤーズフレックス錠(連続服用)の場合、中等量以上の出血が3日間以上持続あるいは少量出血が2週間以上持続しているのなら、4日間休薬しリセットすることで対応します。
あるいは、しばらく周期的服用に変更し、あえて4週間に一回規則的に出血を起こさせて、様子を見ることもあります。
また、エストロゲン成分が“超低用量“の薬剤の方が“低用量”の薬剤よりも子宮出血の頻度が高いことが知られているため、薬剤の変更で対応することもあります。
それでも不正出血が収まらない場合、当院では止血効果のある漢方薬を併用することもあります。

服用者の血栓症発症率は10,000人に1~2名

エストロゲン成分には血液を固める作用がある事が知られています。
重篤な有害事象である血栓症の頻度は、OC・LEP服用者が非服用者の約2倍高くなると言われています。
とはいえ、わが国のOC・LEP服用者での血栓症発症率は1万人中1~2人といわれており、非常にまれな有害事象です。
ただし、肥満の方、喫煙者、50歳以上の方、重症な高血圧・糖尿病の方など、血栓症のリスクが高い方は、OC・LEPを服用することができません。
また、OC・LEP服用中は、長時間の不動、脱水は非常に危険であるため、こまめに体を動かし、水分摂取に心掛けましょう。
もし、激しいふくらはぎ痛、胸痛、腹痛、頭痛やろれつが回らなくなるなど、血栓症が疑われる症状がみられた場合は、速やかに処方医へご相談下さい。

OC・LEPには様々な種類があり、服用方法にもバリエーションがあります。
また、月経困難症の治療薬として、血栓症のリスクが高い方であっても使用できる黄体ホルモン製剤があります。
当院では、個々の体質、症状などに合わせて、副反応に対応しつつ、適切な薬剤を選び治療して参ります。