院長コラム

子宮内膜症の3つの問題点

子宮体部の内側は、子宮内膜という組織に覆われています。その内膜組織は増殖し、妊娠に至らなければ剥がれて排出されます。これを月経といいます。
子宮内膜症とは、子宮内膜様の組織が、何らかの原因で子宮体部の内側以外の場所、例えば卵巣や腹膜などにできてしまい、増殖・出血を繰り返してしまう病気です。
子宮内膜症は様々なトラブルを引き起こしますが、今回は特に大きな3つの問題点について情報共有したいと思います。

様々な激しい疼痛

子宮内膜症の代表的な症状は月経痛(下腹部痛・腰痛)で、患者さんの約9割にみられます。
腹膜、子宮、腸管などに強い癒着があると、排便痛、性交痛がみられることも少なくありません。
また、卵巣に病巣があると、卵巣の中でチョコレートのような“月経血”がたまり(卵巣チョコレートのう胞)、大きくなって痛みの原因になります。
子宮内膜症が更に進行すると、月経とは無関係に激しい下腹部痛、腰痛が出現し、生活の質を著しく下げることになります。

不妊症

不妊症患者さんの半数に、子宮内膜症がみられるといわれています。
卵管周囲の癒着によって卵管の通過障害をきたし、卵子・精子・受精卵が正常に通る事ができなくなることが、不妊の原因の一つといわれています。
その他、子宮内膜症組織から分泌される炎症物資も妊娠に不利に働く事が知られています。
また、卵巣チョコレートのう胞の内容物が卵巣組織にストレスを与え、卵子が減少してしまう可能性も指摘されています。

卵巣がん

卵巣チョコレートのう胞の手術をされた方の3%以上に、卵巣がんが合併しているといわれています。
特に、40歳以上でチョコレートのう胞が4cm以上の場合はがんのリスクが高まり、10cm以上であるとそのリスクは更に高くなります。
月経痛などの自覚症状がなかったとしても、定期的な診察は必要であり、場合によっては手術療法が望ましいこともあります。

子宮内膜症の原因の一つに、月経血が卵管を通じて腹腔内に逆流することが知られています。
特に、10代から月経困難症に悩まされている方は、将来子宮内膜症になるリスクが高まります。
月経痛のある方は、子宮内膜症の早期発見や将来の予防のためにも、早めに婦人科を受診しましょう。