院長コラム

当院における乳児血管腫への対応について

先日、国立成育医療研究センター皮膚科の先生による「乳児血管腫」に関する講演会に参加して参りました。
今回は、講演会での学びを含め、当院における乳児血管腫への対応についてお伝え致します。

 

乳児血管腫とは

別名「いちご状血管腫」と呼ばれ、乳児期で最も多い良性の血管の腫瘤で、日本では1.7%の赤ちゃんに認められるそうです。男児よりも女児に多く、ほとんどは頭頚部・体幹・四肢に発生するようです。
生まれた直後ははっきり見えませんが、生後2週間程度で認められるようになり、1~2か月で急に増大し、生後5か月までにピーク時の80%の大きさまでに達するといわれています。

 

乳児血管腫の自然経過と後遺症

生後1年程は「増殖期」といわれ、その後は「退縮期」に入り縮小していきます。その後5歳から7歳頃に「消失期」に入り、治療しなくても乳児血管腫自体は自然に治る可能性があります。
ただし、発生している場所によっては生命・機能・整容に影響を及ぼすことや、5か所以上みられる場合には内臓にも血管腫が存在しているリスクが高い事があり、その対応には注意が必要です。
また、治療せずに自然に消失した後や、血管腫が急速に増大してからの治療になってしまった場合、皮膚が伸びきって“たるんでしまう”といった後遺症を認めることも少なくないそうです。

 

当院での対応

まず、出生直後に大きな異常がないか全身を確認し、カンガルーケア後の新生児計測の際に詳細にチェックします。
その後、5~6日間の入院中は連日助産師が確認し、2~4日目に私が新生児診察を行います。
退院後、2週間健診でいらした際には助産師による診察あり、一か月健診時には助産師と私のダブルチェックで異常の有無を確認します。
生後2か月目からは小児科がかかりつけ医になりますが、当院の母乳外来ではお母さんの状態だけでなく、赤ちゃんの状態にも注意を払っています。
当院としては、できるだけ血管腫が増大する前に専門施設に紹介したいと考えています。

 

産婦人科施設が関与する生後1か月までの間に乳児血管腫が発生・急増大することから、産科医、助産師の果たす役割は重大と考えています。
当院では、乳児血管腫が疑われる皮膚症状が見られた場合、国立成育医療研究センター皮膚科などの高次施設へ紹介させて頂きます。
今後もスタッフ一同、地域の専門施設と医療連携を取りながら、赤ちゃんとご家族をサポートして参ります。