院長コラム

子宮頚がん予防の2本柱

日本では毎年10,000人以上の女性が子宮頚がんと診断され、3,000人近くの方が子宮頚がんで亡くなっています。
また、20~30代の女性で子宮頚がんになってしまう方が増えており、妊娠・出産の年齢と子宮頚がん発症年齢が重なることが、子宮頚がんの問題点の一つです。
というのも、進行がんの場合は子宮を全摘する必要があるため、術後は妊娠できなくなります。
また、初期のがんや前がん病変の場合は、子宮頚部の一部分だけの切除で済むため子宮は温存できますが、妊娠しても流早産のリスクが高くなってしまいます。
ただし、子宮頚がんは予防することができます。今回は子宮頚がん予防の二本柱について情報共有したいと思います。

・HPVワクチン接種
子宮頚がんの主な要因は、発がん性の高いヒトパピローマウイルス(ハイリスクHPV)の持続的な感染です。
ハイリスクHPVは性交で感染するため、性交の経験のある方は、全員子宮頚がんに罹患する可能性があります。
ハイリスクHPVは約13個のタイプが知られており、そのうち特に悪性度の高い2種類、あるいは7種類のタイプは、ワクチン接種により予防することができます。
ちなみに現在主流になっている「シルガード9」というワクチンは、子宮頚がん原因の7タイプと、尖圭コンジローマという性感染の原因である2タイプの、合わせて9タイプに対応しています。
現在、小学校6年生~高校1年生相当の女性は定期接種(無料)となっており、令和7年3月までは平成9年度~平成18年度生まれの女性もキャッチアップ接種対象者として無料になります(3回接種で約10万円分!)。
尚、できれば性交の経験前に接種されることが望ましいですが、性交経験後でも効果が認められるため、未接種であれば早めにHPVワクチンを接種するようにしましょう。

子宮頚がん検診
性交の経験がある20歳以上の女性は、2年に1回程度の子宮頚がん検診を行うことで、子宮頚がんや前がん病変を早期発見し、早期治療につながることが期待できます。
子宮頚がんの初期はほとんど自覚症状がないため、不正出血などの症状がなくても自治体が行っている検診、職場検診、人間ドックなどを利用して、定期的に子宮頚がん検査を受けるようにしましょう。
尚、当院では世田谷区の検診(子宮頚がん検診:自己負担800円)を行っていますので、お気軽にご来院下さい。

ハイリスクHPVは性交で感染しますが、子宮頚がんだけでなく、陰茎がん、中咽頭がん、肛門がんなどの原因ともいわれており、いずれ世田谷区でも小学校6年生~高校1年生相当の男子も定期接種として無料で接種が可能になるかもしれません。
さらに、子宮頚がん検診の方法も今後変わっていくことが予想されます。
子宮頚がん予防に関する新たな動きがありましたら、今後も皆様に情報提供して参ります。