院長コラム

子宮内黄体ホルモン放出システム(IUS)の子宮内挿入および抜去について

月経困難症や過多月経の治療薬として、子宮内黄体ホルモン放出システム(IUS)を使用することがありますが、異物を子宮内に入れることに対して不安感をお持ちの方もいらっしゃいます。
そこで今回は、IUSの子宮内への挿入と抜去について説明します。

 

 

IUS子宮内挿入の時期

IUSは、放出される黄体ホルモンの効果で子宮内膜の増殖を防ぐことを目的とします。したがって、IUS挿入は妊娠していない時期で、子宮内膜が薄い時期が最も適しています。また、月経中は子宮口がやや拡張しているため挿入しやすいですが、経血が多過ぎるとIUSが脱出してしまう可能性があります。以上から、月経開始3日目から6日目前後の期間に挿入することが推奨されています。

また、避妊目的を兼ねて、妊娠人工中絶手術後に挿入するケースがあります。施設によっては術後すぐに挿入される所もありますが、当院では一週間後の診察で、術後の異常がないことを確認してから挿入しています。

 

 

IUS挿入方法:通常の場合

経腟分娩の経験がある方の多くは、外来診療時に挿入が可能です。まず、経膣超音波検査で子宮の向き、大きさ、子宮筋腫の有無などを確認し、ゾンデという器具で子宮腔の長さや方向を確認します。

子宮腟部を鉗子で把持し、IUSを頚管から子宮内腔へ挿入し、できるだけ子宮腔の奥に留置します。外子宮口2~3cmのあたりでIUS抜去用の糸をはさみで切り、経膣超音波でIUSが適切な位置におさまっているかを確認して終了します。順調であれば、診察時間は5分程度です。

ゾンデによる診察やIUS挿入の際、多少痛みを感じることがありますが、多くの場合、比較的速やかに軽減します。もし、挿入後の痛みが強い場合には、ベッドでしばらくお休み頂きます。

 

 

IUS挿入方法:子宮頚管が細い方の場合

経腟分娩の経験がない方は頚管が細く、そのままではIUSが頚管を通らないことも少なくありません。その場合、多少痛みを伴いますが、子宮頚管拡張器で少しずつ頚管を広げると、ほとんどの方は挿入が可能になります。

しかし、頚管拡張による疼痛が強い場合、当院では手術室で静脈麻酔を用い、ほとんど痛みを感じないような状態で頚管を拡張しIUSを挿入します。なお、静脈麻酔を使用した場合は、病室で2~3時間休んで頂いてからお帰り頂きます。その際、自動車・バイクの運転、自転車は避けて頂いております。

 

 

IUS抜去方法

IUSの効果が減弱する5年ごとに入れ換えをします。その際、子宮口から出ている(あるいは子宮頚管内に引っ込んでしまった)抜去糸を牽引して抜去します。その際、やや痛みを感じることがありますが、すぐにおさまります。

 

 

当院でのIUS挿入費用は、通常であれば約11,000円、麻酔下で行うと約15,000円となります。
1回にお支払い頂く金額は高いですが、5年間有効であり、子宮体がんや子宮内膜ポリープの発生リスク軽減も期待できます。
特に、経腟分娩の経験がある方で現在挙児希望がなく、過多月経・月経困難症でお悩みの方は是非IUSをご検討下さい。