院長コラム

腟トリコモナス症の症状・診断・治療

腟トリコモナス症は腟トリコモナス原虫による性感染症で、膣内以外にも尿路やバルトリン腺などにも定着することがあります。
今回は、「産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2017」「妊娠と授乳 改訂2版」(南山堂)などを参考に、腟トリコモナス症の症状・診断・治療について説明します。

 

 

主な症状は「異臭を伴う帯下」と「外陰部のかゆみ」

腟トリコモナス症患者さんの多くは、魚が腐ったような異臭を伴う帯下の増量、外陰部のかゆみ、不正出血や性交時出血などを主訴に婦人科を受診されます。

ただし、膣内に腟トリコモナス原虫が存在していても、帯下の異常や外陰部のかゆみなどの症状を全く認めず、子宮頚がん検査の際にたまたま発見されることも少なくありません。

 

 

鏡検・培養や細胞診で診断

帯下を顕微鏡で調べる鏡検法は簡便ですが、診断率は60~70%といわれています。当院では、細菌性腟症を疑った場合には腟培養検査を行うとともに、子宮腟部びらんがみられた場合は子宮頚部の細胞診も行います。

 

 

治療の原則はフラジール錠内服による全身投与

腟トリコモナス症は腟内にとどまらず、尿路などにも感染している可能性があるため、抗原虫薬の腟錠による腟内局所投与ではなく、内服による全身投与が主流になります。一般的な服用方法は、フラジール錠250mg1回1錠、1日2回10日間で、飲み忘れることなくしっかり飲みきることが大切です。

尚、服薬中の飲酒により、腹痛、嘔吐などの副作用が出現するため、服薬中および服薬後3日間は飲酒を避けるようにしましょう。また、フラジール錠は発がん性が否定できないといわれており、1クールの投与日数は10日間程度にとどめ、追加治療が必要な場合は1週間あけるようにします。

 

 

妊娠中・授乳中の治療法

フラジール錠の内服薬は基本的に妊娠のどの時期でも投与可能ですが、念のため妊娠12週までは経口摂取ではなく、フラジール腟錠250mgを1日1錠、1日1回10~14日間腟内に挿入することがほとんどです。

また、授乳期は内服・腟錠ともに児への影響はほとんどないため、授乳を中止する必要はありません。ご心配であれば、腟錠から始めましょう。

 

 

治癒判定は月経後に

治癒判定は、自覚症状の消失と鏡検・培養による腟トリコモナス原虫の消失を確認します。女性の場合、月経血中で増殖することがあるため、次回月経後に腟トリコモナス原虫の消失を確認することが大切です。

 

 

腟トリコモナス症は重篤な感染症ではありませんが、不快な症状により日常生活に支障をきたす病気です。
性交時コンドームを使用していたとしても、パートナーも感染している可能性があります。
再感染を防ぐため、二人でしっかりと治療し、治るまでは性交を避けるようにしましょう。