院長コラム

妊婦さんは新型コロナウイルス感染症治療薬「ゾコーバ錠」を飲まないで!

「ゾコーバ錠」は2022年11月に認可された新型コロナウイルス治療薬で、重症化リスク因子の有無に関わらず使用できる内服薬です。
新型コロナウイルスに対する内服薬は、他にも2剤(ラゲブリオカプセル、パキロビッドパック)が認可されていますが、これらは重症化リスク因子を持つ患者さんが対象です。
そのため、適応範囲は広い「ゾコーバ錠」を服用される患者さんが今後増えると思われます。

ただし、「ゾコーバ錠」は、胎児奇形をきたす可能性があるため、「妊娠している女性又は妊娠している可能性のある女性には投与できない」と添付文書に記載されています。
しかし、2023年9月時点で、投与後に妊娠が確認された症例が計15例にのぼり、因果関係は不明ですが、流産例もあったとのことです。

そのため、妊娠していることが明らかな場合は、コロナ感染診察の際に主治医(主に内科医と思われます)、および処方薬局では薬剤師さんに、必ず妊娠している旨お伝え下さい

更に、妊娠の可能性がある場合、例えば低用量ピル(経口避妊薬や低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬)をしっかり服用している場合や子宮内避妊具(IUD)・黄体ホルモン放出子宮内システム(IUS)を挿入して5年以内の方を除き、「性交後、明らかな月経が来ていない方」は、妊娠反応は陰性でも、妊娠している可能性がありますので、「ゾコーバ錠」を服用しないようにしましょう。ちなみに、コンドームは確実な避妊にならない旨、ご承知おき下さい。

また、「ゾコーバ錠」服用中はもちろん、最終服用後2週間以内は性交をしないようにしましょう。万が一、「ゾコーバ錠」服用中および最終服用後2週間以内に妊娠していることが判明した場合は、必ず速やかに処方医へご連絡下さい。

ちなみに、わが国の母体保護法のもとでは、「ゾコーバ錠」服用中および最終服用後2週間以内に妊娠が判明したとしても、胎児奇形の可能性があるからといって人工妊娠中絶をすることはできません。