院長コラム

妊婦さん・授乳婦さんのインフルエンザ対策

インフルエンザは例年12月~3月の短期間で急速に広がります。したがって、特にこれからの時期、インフルエンザ対策を十分に行なうことが求められます。特に妊婦さんは感染すると重症化しやすいことが知られています。
今回は妊婦さんや授乳婦さんを対象に、インフルエンザの予防を中心に説明します。

 

 

人混みを避けて、マスク・手洗い・うがいを励行しましょう

インフルエンザは感染した人のくしゃみや咳などによって飛び散った飛沫を鼻や口から吸い込むことで感染します。したがって、外出時には鼻や口を覆うように適切にマスクを装着し、こまめに手洗いとうがいを励行することが大切です。

しかし、インフルエンザ感染予防にとって最も重要なことは、人混みを避けることです。特に年末は多勢の人で賑わっている商業施設でお買い物をする機会が多くなりますが、妊婦さんはなるべく立ち入らないようにしましょう。また、帰省される方も多いと思いますが、できるだけ帰省ラッシュに巻き込まれないように注意して下さい。
さらに年明けは、混んでいる寺社への初詣は控えた方が無難です。もちろん、大人気のテーマパークや映画館、劇場なども避けるようにしましょう。

 

 

重症化予防のため積極的にインフルエンザワクチン接種を

インフルエンザワクチンは妊娠期・授乳期のどの時期でも接種可能です。接種して免疫の効果が出るまで約2~3週間かかりますので、遅くとも年内には接種されることをお勧めします。1回接種すればその後3~4ヶ月は効果が持続しますが、ワクチンを接種したからと言って、必ずしもインフルエンザにかからないという訳ではなく、あくまでも重症化を防ぐ事が目的です。そのため、ワクチンを接種していても、人混みを避けて、マスク・手洗い・うがいを励行するようにしましょう。

尚、インフルエンザワクチンには防腐剤は含まれているものと、含まれていないものがありますが、どちらを接種しても問題ありません。2019年12月現在、当院では防腐剤が含まれているワクチンのみを準備しており、当院通院中の妊婦さんに限り接種しております(税込3,700円)。

 

 

抗インフルエンザ薬でしっかり予防を

インフルエンザ患者さんと接触して2日以内であれば、抗インフルエンザ薬による予防投与が有効です(自費診療)。抗インフルエンザ薬には内服薬と吸入薬があり、内服薬であるタミフル錠の場合、1日1錠ずつ10日間服用する方法で70~90%の予防効果があるといわれています。一方、吸入薬であるイナビル吸入粉末剤(20mg)の場合、2容器(40mg)を1回吸入するだけで10日間程度予防効果が期待できます。

ちなみに、インフルエンザに感染した場合は、発症から48時間以内に抗インフルエンザ薬の使用が効果的です。タミフル錠の場合、1日2錠ずつ5日間の服用が必要ですが、イナビル吸入粉末剤(20mg)の場合は、予防投与と同様に2容器(40mg)を1回吸入するだけです。

 

 

妊婦さんや授乳婦さんは薬剤の服用を躊躇されることが多いですが、インフルエンザワクチンも抗インフルエンザ薬も積極的に使用して問題ありません。
特に、吸入タイプであるイナビル吸入粉末剤であれば、インフルエンザウイルスが潜む気管支に直接作用し、血中への薬剤成分の移行も少ないため、予防としても治療としても、より効果的かつ安全に使用できます。
高熱、関節痛、倦怠感が見られたら、まずは内科を受診し、もしインフルエンザと診断されましたら、抗インフルエンザ薬を用いた適切な治療をして頂きましょう。