院長コラム

「プレコン・チェックシート」(女性用)について(1)

2015年、国立成育医療研究センターに「プレコンセプションケアセンター」が開設されました。その際、男女別の「プレコン・チェックシート」が作成され、現在国立成育医療研究センターのホームページからご覧に頂けます。今回は、「プレコン・チェックシート」(女性用)の中から3項目を抜粋して、情報共有したいと思います。

〇適正体重をキープしよう

妊娠時にやせの方は、胎児の発育が不良になり、赤ちゃんの出生時体重が軽くなってしまう傾向があります。更にそのような低出生体重児は、将来糖尿病や高血圧症などの生活習慣病になりやすいといわれています。一方、妊娠時に肥満の方は、妊娠高血圧症症候群や妊娠糖尿病、難産など母児のリスクが高くなることが知られています。更に、肥満の妊婦さんから生まれた赤ちゃんも、将来肥満や生活習慣病のリスクが高くなります。そのため、妊娠を計画する前から適正体重を維持することが大切です。ちなみに、体格の指標であるBMI《体重kg÷身長m÷身長m》が「18.5以上、25.0未満」が適正であり、その範囲にとどまるように体重をコントロールしましょう。

〇バランスの良い食事と葉酸サプリメント摂取を心がけよう

適正体重を維持するためにも、大切な栄養素をしっかり必要量摂取するためにも、バランスのとれた食生活は欠かせません。中でも、ビタミンB群の一種である葉酸は、妊娠初期の胎児の形成には欠かせない栄養素です。にもかかわらず、現代の日本女性の葉酸摂取量は、妊婦栄養摂取推奨量の半分にも満たない状況です。そのため、妊娠する1か月前から妊娠12週まで、食事とサプリメントで葉酸を積極的に接種することが推奨されています。当院では、妊娠を予定されるすべての女性の方に、葉酸はもちろんマルチビタミンや鉄が豊富なサプリメント「エレビット」をお勧めしています。

〇ワクチン接種をしよう

妊娠20週までに母体が風疹に感染してしまうと、胎児の心疾患、難聴、白内障などのリスクが高くなります(先天性風疹症候群)。幼少期に風疹ワクチンを接種していても、次第に抗体価(免疫の強さ)が低下してしまう事があるため、妊娠を考えるようになりましたら抗体価を調べ、必要ならワクチンを接種しましょう(検査もワクチン接種も自治体の助成があります)。当院では麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)を推奨しています。ただし、MRワクチン接種後2か月は避妊するようにして下さい。また、子宮頚がんは20~30代に増えており、妊娠前の女性にとって深刻ながんです。浸潤がんの場合、子宮を全部摘出する必要があるため、術後妊娠することはできません。また、ごく初期のがんの場合も、子宮頚部の一部を切除する事が多いとはいえ、妊娠したとしても流産や早産のリスクが高くなります。そのため、是非子宮頚がん予防として、HPVワクチンを積極的に接種(定期接種またはキャッチアップ接種)するようにしましょう。

将来妊娠する、しないに関わらず予防は大切です。適正体重を維持し、バランスの取れた食生活を心掛け、病気の予防のためにワクチンを接種する。是非、生活の中に取り入れてみて下さい。