院長コラム

妊婦さんのスキンケア

妊娠すると生理的に皮膚の状態が変化するため、様々なお肌のトラブルに悩まれる方も少なくありません。
今回は「妊婦さんのためのスキンケア・ガイド」(日本産婦人科医会編)と「乾燥肌のボディケア」(持田ヘルスケア株式会社企画)という小冊子の情報を共有したいと思います。

 

 

○ 色素沈着

妊娠するとエストロゲンという女性ホルモンが増加します。このエストロゲンにはメラニン色素(皮膚に存在して、紫外線から肌を守る色素)の生成を促す働きがあります。その結果、乳頭・乳輪、腋の下、外陰部、肛門周囲などの皮膚の色が濃くなります。さらに、妊娠性肝斑といって、額、頬、鼻、口唇に左右対称性な「しみ」が広がることがあります。

これらの色素沈着は生理的なものであり、分娩後エストロゲンの低下にともない少しずつ薄くなるため、治療の必要はありません。ただし、メラニン色素は紫外線に当たることでより濃くなるため、気になる方はUV対策をしっかり行なうことをお勧めします。

 

 

○ 妊娠線

妊娠に伴う皮下脂肪の増加や子宮の増大により、皮膚は急速に引き伸ばされます。皮膚は外側の表皮と内側の真皮からなっていますが、表皮の伸びに真皮部分やその下の皮下組織の伸びが追いつけなくなります。その結果、下腹部、乳房、大腿、殿部などに、ピンクから褐色の裂けたように見える線が現れることがあります。これを妊娠線といい、分娩後は色が薄くなり白色の線として残ります。

完全に防ぐことはできませんが、①妊娠後半、急激に体重を増加させない、②お腹、乳房、お尻などの皮膚に、ボディ用の乳液やクリームで潤いを与えて伸びやすくする、といったことで妊娠線の発生を減らすことができるようです。

 

 

○ 腹壁などの皮膚のかゆみ

妊娠中、湿疹や尋麻疹など、病的な皮膚疾患がみられることも少なくありません。そのような時には、外用剤や抗アレルギー剤の内服薬などによる薬物療法が必要になります。しかし、湿疹などはみられないものの、乾燥肌で痒みをきたす場合には、毎日のスキンケアが有効です。

石鹸やボディーソープは低刺激のタイプを選び、ナイロンタオルや垢すりタオルを避け、柔らかなタオルやスポンジを用いて、十分泡立てて洗うように心掛けましょう。さらに入浴後など、顔や体全体に保湿ジェルに塗ることで、皮膚の潤いを保つことも大切です。当院では「コラージュDメディパワー 薬用保湿ジェル」などをお勧めしています。

 

 

○ 外陰部のかゆみ

外陰膣カンジダ症や接触皮膚炎など、病的な状態であればしっかりと薬物治療する必要がありますが、症状がなくても日頃からデリケートゾーンをケアすることはとても大切です。当院では、抗菌・抗真菌の作用がある弱酸性・低刺激性の「コラージュフルフル泡石鹸」などを使用し、泡でやさしく洗うことをお勧めしています。ただし、腟内の善玉菌を減らさないために、腟内洗浄はお控え下さい。

 

 

妊娠に伴う皮膚のトラブルの多くは生理的なものであり、日々の心がけにより予防できることもあります。
石鹸・ボディシャンプーの種類や洗い方、保湿剤などによる肌のお手入れ方法など、妊娠をきっかけに日頃のスキンケアについて見直してみることをお勧めします。